私の和菓子店が大ヒットした途端、離婚届を破り捨てた元夫が戻ってきた
Minto
恋愛現代恋愛
2026年05月29日
公開日
4.1万字
連載中
新婚初夜。
冬月柚は白無垢姿のまま、寿の飾りで埋め尽くされた和室で、壁一枚隔てた向こうから夫の声を聞いてしまった。
「君といる時だけは、俺は仮面を外せる」
――その瞬間。
茶を運ぶ彼女の手は震えていた。
熱い抹茶は高価な振袖にこぼれ落ち、同時に、結婚への幻想もすべて焼き尽くした。
さらに絶望の中で現れたのは、“神様”を名乗るシステムだった。
提示された条件は冷酷そのもの。
「一年間、高嶺家の若奥様として完璧を演じろ。成功すれば冬月家の莫大な借金は帳消し。だが醜聞を出せば、負債は倍になる」
だから柚は、“理想の妻”を演じ始めた。
姑からの執拗な嫌がらせにも耐え、
大勢の前で和菓子作りを披露させられ、
夫の愛人からの挑発や罠、さらには偽造された親密写真による中傷まで受け入れた。
耐えるしか、生き残る道はない。
そう思っていた。
――あの人が現れるまでは。
幼い頃からずっと彼女を守ってきた幼なじみ。
彼は震える柚の手を握り、彼女が安心して和菓子を作れる工房を用意し、
彼女を傷つけた人々へ静かに告げる。
「お引き取りください。ここは、彼女を泣かせる人間を歓迎しません」
そして後日。
桜吹雪の下で、彼は片膝をつき、透き通る飴細工の指輪を差し出した。
「今度は政略結婚じゃない。俺自身の意思で、君に結婚してほしい」
少し照れたように笑って、続ける。
「もし気に入らなかったら……その場で食べるけど」