晴雨亭で千回の謝罪を終えた私は、元婚約者がもう手の届かない店主になっていた
Kazuha
恋愛現代恋愛
2026年05月29日
公開日
3.8万字
連載中
東京屈指の料亭「晴雨亭」で、私は身に覚えのない罪を着せられ、皆の前で千回もの土下座を強いられた。
すべては、妹の治療費のため。
私は屈辱的な婚約契約書に、震える手でサインした。
――それなのに。
妹は助からなかった。
しかも、あの女――“私が傷つけた被害者”を演じる女が、妹の遺骨を「うっかり」床にぶちまけた時ですら、
婚約者は私にこう言った。
「ちゃんと、姫の誕生日用の和菓子を用意しておけよ」
その日。
私は婚約書を燃やし、人混みの中へ姿を消した。
それから数年後。
鎌倉で、小さな和菓子屋を始めた。
店先には、こんな札を立てて。
――“霧島姓のお客様、お断り”
そして雨の夜。
かつて雲の上の存在だった霧島財閥の後継者が、全身ずぶ濡れのまま店へ現れる。
赤く充血した目で、震える声を漏らした。
「……調べたんだ。あの時のことを……」
私は何も言わず、彼の頬を思いきり叩いた。
乾いた音が、雨音の中に響く。
「謝れば済むなら――」
静かに彼を見つめながら、私は言った。
「私の妹を、返してくれるの?」