エサやり禁止
恋愛現代恋愛
2026年06月03日
公開日
4.3万字
連載中
母の高額な治療費を支払うため、桜幸奈は一枚の契約書にサインした。
その契約内容は――名門橘家の後継者・橘颯太の、一年間限定の妻になること。
契約条項は冷酷だった。
「絶対服従」
「恋愛感情を持たないこと」
幸奈は豪華でありながらどこか冷え切った高層マンションへ移り住み、名家の妻として複雑な作法を叩き込まれる。家族の晩餐会では値踏みするような視線に晒され、理不尽な嫌味にも耐え続けた。さらに、颯太の心には忘れられない“理想の女性”の存在があるようだった。
だが、幸奈を待っていた試練はそれだけではない。
かつて突然終わった初恋。その別れの裏に、橘家が関わっていたことを知る。母の病状は悪化し、橘家内部の争いも激しさを増していく。次々と明かされる嘘と裏切りに心身ともに追い詰められた幸奈は、署名済みの離婚届だけを残して、誰にも告げず姿を消した。
その時初めて、いつも冷静沈着だった橘颯太は理性を失う。
仕事も立場もすべて投げ出し、必死に彼女を探し続けた。
そして再会の日――。
彼が差し出したのは、かつての冷たい契約書ではない。
「もう契約なんていらない」
そう言って彼は、ありのままの自分と、これからの人生のすべてを彼女に捧げた。