契約結婚五年後、私の救世主の夫に手ひどく地獄へ突き落とされた
余白の音
恋愛現代恋愛
2026年06月07日
公開日
3.9万字
連載中
月島汐の人生は、婚約披露宴で婚約者に公然と非難され、父親がその場で絶命した日、完全に粉々になった。
彼女が鴨川に身を投げようとしたその直前、高嶺の財閥後継者・清原朔也が手を差し伸べた。
彼は汐を水難から救い、婚姻と庇護を与え、彼女に唯一の浮き輪をつかんだかのような錯覚を抱かせた。
五年間、汐は全身全霊で彼に依存し、さらには彼の子を宿した。
だが箱根の夜、温泉の蒸気に包まれたその場で、彼女は耳を疑う会話を聞いた。
朔也と側近の密談――
如何にして彼女の家の百年の財産を破滅させるか、
如何にして父を追い詰めるか、
そして出産後の最も弱った時に、最後の土地契約を奪い、彼女を「適切に処理」する計画。
汐はまだ膨らみ始めた腹を抑え、月光の下で声もなく震えた。
今回は、もはや浮き輪はない。
彼女が這い上がるのは、自分自身で掴むしかない深淵だった。
そして後日、清原朔也が自信満々で開催した発表会では、すべてのスクリーンに彼の罪が一斉に映し出された。
月島汐は、すでに人混みに紛れて姿を消していた。
遠く離れた北海道で、誰かが彼女のために暖かな灯を灯し、そっと告げる。
「汐、帰っておいで」