五歳の息子が財閥御曹司に「パパ」と呼びかけたら、捨てられた母親は裏の女王でした
花曇 ひとむら
恋愛現代恋愛
2026年06月12日
公開日
2.6万字
連載中
五歳の颯太が、一人で街まで出て、今まで会ったことのない父親を探した。
母・橘澪は長野県の里山で、彼を一人で育て、父親のことは一度も口にしなかった。
しかし、財閥三代目の有栖川渉は信じなかった。彼は机の上にDNA報告書を置き、確認後に処理するつもりだった。
だが調べていくうちに、全国トップの心臓外科医が彼女をサポートしていることがわかり、トップクラスのセキュリティ専門家が彼女を「先生」と呼ぶことも知った。さらに、彼女名義の絵画の落札価格は、最高で一枚5億8千万円に達していた。
そして彼は、彼女の家の古い客間で、人生で最も長く眠ったことを知った。
彼の不眠症を治せるのは、彼女だけだった。
このことは誰にも言わなかったが、彼は毎週末、里山へ向かうようになった。最初はプロジェクト審査を口実に、やがて口実すら必要なくなった。
彼女の実母は、家柄が足りないとして彼女を豪門のPRツールとして使おうとした。
彼の母親は、皆の前で「相応しくない」と言った。
財閥の令嬢は薬を盛り、143円をメモに置き去りにした。彼女は手を叩き、平然と去った。
彼女は無関心だったのではない。
ただ、自分のために他人に立ち上がらせることをしなかっただけだ。
そしてついに彼は、その場で、皆の前で言った。
「この件は僕が処理する。君は気にしなくていい」
その後、敵対していた家族は破産し、令嬢はすべての社交界から姿を消した。彼の母親は結婚式に招かれなかった。
ヨーロッパの駐日大使も出席したその結婚式で、彼は澪の実父として立ち、言った。
「これは、僕が二十年探してきた娘だ」
颯太は小さな礼服を着て、結婚式後、ノートに「パパ」の隣に真剣な筆で「ママ」と書いた。
そして、こう言った。
「やっぱり、そうだと思った」