私は“あなたの7年”だと思っていた――でも本当は、彼の沈黙に刻まれた10年だった。別れた後に知る、廃墟の恋人
きっとう
恋愛現代恋愛
2026年07月02日
公開日
6.2万字
完結済
私は人違いをしていた。七年間ずっと。
桐谷涼介は、その錯覚を楽しむように、何も言わずに私の好意を受け取り続け、私の連絡にも気が向いたときしか応じなかった。
彼は知らなかった。
私が高校の卒業アルバムをすべて見返し、そこに必ず清川修が写り込んでいることに気づいていたことを。
文化祭、運動会、図書館――いつも背景に、彼はいた。
彼は知らなかった。
七年前の入院記録に、担当医として清川修の名前が残っていたことを。
そして私は、もうすべてに気づいていた。
清川修。
十年間、ずっと沈黙のまま私を見続けてきた男。
分かれたその夜、彼はすでにバーに現れた。
踊る私を引き寄せ、壁に押し付けるように口づけた。
酔った彼は、夜中ずっと私のマンションの下に立っていた。
最初に言った言葉は、「今日は一日、あいつと一緒にいたんだな」だった。
彼はスケッチブックを差し出した。
そこには、何年も描かれ続けた私の顔があった。
「本当は、もし一生思い出してもらえなかったら、そのまま何も言わずに終わるつもりだった」
桐谷は最後に頭を下げて去っていった。
私はただ、「恨むことはできない。でも許すこともできない」とだけ答えた。
なぜなら、私はもう決めていたからだ。
十年待ち続けた人に、すべてを返すと。
そしてその人は、期待を裏切らなかった。
新婚初夜、その沈黙はようやく終わった。