婚約者に人前で捨てられた私を、冷淡な天才医師が家に迎え入れた――車椅子のプリマは、一度の手術で再び舞台へ戻る
青葉
恋愛現代恋愛
2026年07月09日
公開日
6.3万字
完結済
星野梨央は、かつて東京バレエ団史上最年少のプリンシパルだった。
彼女の甲は三十二回転のフェッテを完成させることができ、その身体はまるで一度も汚れを知らないかのように軽やかだった。
――しかし、あの交通事故ですべてが変わった。
目を覚ました時、彼女は足の指一本さえ感じることができなかった。
病室の前に立つ婚約者・月城慎一は、医師や看護師たちの前で、通りかかった見知らぬ男を指差して言った。
「君を本当に支えられるのは、医者であって俺じゃない」
その瞬間、梨央は悟った。
十年以上続いた幼なじみとの関係が、粉々に砕け散ったのだと。
さらに皮肉なことに、月城家ではすでに彼女について話し合われていた。
「まだ子どもを産めるのか」
「後継者の妻にふさわしいのか」
そして、両親が彼女に残した信託財産までもが、彼女の最後の尊厳と引き換えに利用されようとしていた。
車椅子に座り、京都を襲う大雪の中を進む梨央。
ただ一人の教授に、自分の病状を診てもらうためだった。
しかし、雪の中に立っていた慎一は言った。
「もう車椅子なんだろ。これ以上、月城家に恥をかかせないでくれ」
最も愛していた人に――
彼女は、手ずから奈落の底へ突き落とされた。
そして、その深淵で。
一人の男が、彼女に手を差し伸べた。