蝉時雨の停止線 ― 十年目の引き出しに残された熱 ―
行動哲学
SF時間SF
2026年07月12日
公開日
1.3万字
完結済
蒸す放課後の高校、止まった時計の下で、隣の彼の繊細なスケッチに心がざわついた。図書室の光塵、ぬるいオレンジソーダを分け合い、「明日もここで」と笑う。鍵の屋上、雷の夜、走る背中。夢を追うか、隣に残るか——二人の選択は夏の蝉時雨にかき消される。やがて十年後、取り壊し前の母校へ戻った私は、埃の教室で引き出しを開く。「ねえ、聞こえる?」一瞬だけ音が引く。あの夏が現在に触れる。まだ言えなかった言葉と、まだ終わっていない約束の物語。