財閥のそばで五年間、日陰の恋人だった私――本当の愛を選んだ瞬間、彼は初めて後悔した
バイオファー
恋愛現代恋愛
2026年07月17日
公開日
2.4万字
連載中
人は、好きな人のためにどこまで自分を犠牲にできるのだろう。
柚木深雪は、五年間かけてその答えを示した。
彼が帰ってくるのを家で待つ日々。
その一方で彼は、世界中を飛び回り、他の女性たちに金を使い、キスをして、機嫌を取っていた。
「いい子だから、もう騒がないで」
たったその一言で、彼女のすべての我慢や悲しみは片付けられた。
あの自由奔放な御曹司のそばにいた五年目。
柚木深雪は、妊娠したのではないかと思わせる写真を撮られてしまった。
瞬く間に社交界では噂が広がった。
「深雪は子どもを利用して、財閥の妻の座を狙っている」
誰もがそう思った。
そんな時、九条玄が長年意地を張り続けていた初恋の女性が、知らせを聞いて帰国した。
誰もが予想した。
これから、激しい争いが始まるのだと。
しかし――
九条玄が出張から戻った時、彼が聞いたのはただ一つの知らせだった。
深雪が子どもを諦め、故郷へ帰ったということ。
深雪は小さくため息をついた。
「はぁ……私たちみたいな真面目な子は、普段なら多少自由に恋愛してもいいの」
「でも、本当に名前もないまま子どもを産むなんて知られたら……両親に殺されちゃう」
けれど彼女は知らなかった。
玄のもとを離れて間もなく――
かつて“遊び人の御曹司”と呼ばれた男が、まるで狂ったように世界中を探し回っていたことを。
凍える雪の中で、涙を流しながら。
「もう一度だけ……俺を見てくれ」
そう願いながら、彼女が振り返ってくれる日を待ち続けていたことを。