夢の中で結ばれた相手は、まさか彼氏の兄だった――別れた後に始まる、両想いの修羅場
Fujii
恋愛現代恋愛
2026年07月22日
公開日
1.8万字
連載中
水野澪と松本謙の初めての出会いは――夢の中だった。
書斎の柔らかな灯りの下。
彼は彼女を腕の中に抱き、離したくないと言うように優しく囁いた。
「彼と別れてくれないか?」
そう言って、澪の心を揺らした。
けれど彼女は思っていた。
これはきっと、疲れやストレスが見せたただの幻だと。
――そう思っていた。
現実で彼に出会うまでは。
冷静で、完璧で、誰にも隙を見せない男。
松本グループの社長。
そして何より――
自分の恋人の、実の兄だった。
それから彼は、少しずつ澪の日常に入り込んできた。
体調が悪い時には何も言わず温かい飲み物を差し出し、
元恋人に付きまとわれた時には彼女を連れ出し、守るように抱きしめた。
周囲が冗談半分で、別の男性との乾杯を勧めた時には、
静かに立ち上がり、彼女の手を取って人目のない場所へ連れて行った。
そして、誰にも見せなかった本当の顔で彼女を抱きしめた。
松本謙は言った。
初めて夢の中で澪に出会った瞬間から――
もう、他の誰かを見ることができなくなったのだと。
後に、彼の母親は澪の手を握りながら微笑んだ。
「澪さん、あの子を救ってくれてありがとう」
けれど澪はいつも思う。
本当に救われたのは、自分の方だった。
服を引き裂かれ、人々の視線に晒されたあの夜から。
何も信じられなくなっていた自分を、彼は拾い上げてくれた。
そして今。
鎌倉の雪景色の中、彼は彼女の手を握りながら歩いている。
二人は額をそっと寄せ合う。
「……私を見つけてくれて、ありがとう」