研究費のため財閥御曹司の籠の鳥になった生物学博士――破産の噂で逃げ出した私を待っていたのは、まさかの偽装破産だった?!
博論地獄
恋愛現代恋愛
2026年07月23日
公開日
2万字
連載中
私は、財閥御曹司との関係を、割のいい取引だと思っていた。
彼には、家族の前で演じるための相手が必要だった。
私は、壊れた遠心分離機を直し、研究室を再建するための資金が必要だった。
それだけの関係。
そう思っていた。
だから――。
彼が失脚し、財閥が傾いたという噂を聞いた夜。
私は迷うことなく荷物をまとめて逃げ出した。
それでも、今まで世話になったマンションのスタッフには、きちんと退職金を渡して。
ところが。
逃げた先で待っていたのは、彼の護衛だった。
連れて行かれた倉庫で、私は真実を知る。
彼の破産は、一族内部の裏切り者をあぶり出すための偽装だった。
そして私は――。
彼にとって最大の「逃亡容疑者」になっていた。
それから後。
学会の舞台裏で、彼は私を傷つける噂を流した者たちへ、静かに牙を剥いた。
「彼女の研究成果は、俺の名声を借りる必要なんてない」
「だが、彼女を侮辱する者を、大矢野家は決して許さない」
その瞬間、私は初めて理解した。
本当の狩人は、相手を檻に閉じ込めたりはしない。
彼は私がいつでも逃げられるよう、すべての道を残していた。
ただ一つ。
私自身の意思で、彼のもとへ戻る日を待ちながら。