契約したはずの魅魔が家政夫として来てしまった――三ヶ月後、彼は「ご主人様、最初からずっと我慢していました」と告げた
Goya
恋愛現代恋愛
2026年07月23日
公開日
2万字
連載中
吉田真由美は、年末ボーナスを全部使って縁結び社から“伴侶型魅魔”を注文した。
理想の恋人を手に入れた――はずだった。
けれど三ヶ月が経っても。
彼女は一度も、彼の手を握ることすらできていなかった。
キャミソール姿で目の前を歩いても、彼はなぜか洗濯物を取り込みに行く。
夜中に部屋を訪ねて「少し話したい」と言っても、
「鍋を火にかけたままだから」
と台所へ戻ってしまう。
ついにはソファの上で彼を押し倒してみても――
彼は優しく彼女を起こし、ただ一言。
「……飲みすぎだよ」
真由美は思っていた。
きっと、これは“焦らし作戦”なのだと。
けれどある日、カスタマーサポートから衝撃の連絡が届く。
「大変申し訳ございません。発送ミスがございました」
「黒田誠様は伴侶型魅魔ではなく、家事特化型魅魔です」
「規約上、本人の意思に反する親密な行為を強制することは禁止されています」
その瞬間。
真由美はようやく気づいた。
この三ヶ月間、自分が必死に口説いていた相手は――
ただ美味しい料理を作って、穏やかに暮らしたいだけの男性だった。
「……これって、職場じゃなくてもセクハラじゃない!?」
真由美は決めた。
もう彼に近づかない。
彼を守るために、距離を置く。
彼を自由にするために、手放す。
――でも、彼女はまだ知らなかった。
誠は三ヶ月前の時点で、すでに“高位眷属”へと進化していたことを。
そして彼が一度も抵抗しなかった理由。
それは――
出会った初日から、彼はもう彼女に恋をしていたからだった。