財閥御曹司の婚約者が連れてきた社交界――嫌われていると思った私を、彼の友人全員が密かに口説いていました
つづら
恋愛現代恋愛
2026年07月28日
公開日
2.8万字
連載中
神谷景臣は、自分の人脈こそが恋人を守る最高の場所だと信じていた。
彼は彼女を社交の場へ連れて行き、友人たちに彼女の相手を頼んだ。
さらには、自ら九条多鶴子の部屋へ送り届ける。
「二人とも女同士だろ。まさか、彼女まで怖がることはないよな?」
彼は知らなかった。
多鶴子が、彼女の好きな甘さをとっくに覚えていたことを。
一之瀬緒人が「無事を知らせる」という理由で送っていたものが、彼女に会うための自撮りばかりだったことを。
藤原冬真が彼の料理人を引き抜いたのは、毎日彼女へ甘い物を届けるためだったことを。
黒沢泰幸が彼女のために料理教室へ通い、一から海鮮ラーメンを作れるよう努力していたことを。
彼は知らなかった。
恋人に「もっと寛大になれ」と求めるたびに――
自分の手で、彼女を誰より大切にする人たちのもとへ送り出していたことを。
そして別れの日。
全員が同時に、本当の気持ちを明かした。
「やっと聞いてくれたのね」
多鶴子は静かに言った。
「あなたが彼女を私たちの前に連れてきた時から、私は言っていたでしょう」
「そんなことをするべきじゃないって」