予知夢を見たわがまま令嬢の私、婚約者を大切にすると決めたのに――なぜか彼に浮気を疑われています
博論地獄
恋愛現代恋愛
2026年07月30日
公開日
6.8万字
連載中
九条綾乃は、ある日ひとつの夢を見た。
夢の中の彼女は、藤原蓮司のために婚約者・一之瀬彰人を何度も傷つけていた。
約束を破る。
会うことを拒む。
彰人からの贈り物を捨てる。
そして最後には、婚約解消の書類に迷うことなく署名していた。
雨の中に立つ彰人は、冷たい目で彼女を見つめる。
「綾乃、君には本当に失望した」
その言葉を聞いた瞬間、彼女は目を覚ました。
全身に冷たい汗をかきながら。
夢の中の記憶は、すべて残っていた。
わがままに振る舞う自分。
何も言わず離れていく彰人。
そして、自分で書いた婚約解消の署名。
あれは夢ではない。
未来からの警告だった。
そう気づいた綾乃は、変わることを決めた。
夜中に何度も連絡しない。
無理なお願いをしない。
返信が遅いだけで責めたりしない。
彰人が出張から戻り、欲しかったハンドバッグを買えなかったと謝った時も、彼女は笑った。
「大丈夫。もういらないわ」
その瞬間。
彰人の表情が変わった。
「……どうして?」
「本当に、いらないのか?」
赤く潤んだ目で、彼は小さく問いかける。
「誰か別の男が買ってくれるのか?」
綾乃はようやく気づいた。
この関係で、本当に失うことを恐れていたのは――
自分ではなく、彼の方だったのだ。