親友に奪われた彼氏の正体――私が軽い気持ちで会ったお見合い相手のほうが、はるかに格上でした
巻口
恋愛現代恋愛
2026年07月31日
公開日
2.4万字
連載中
桐生茜のルームメイトは、彼女の身分を勝手に利用し、茜の“彼氏”を騙し取った。
そして次の瞬間――
「私の男に執着している」
そう茜を悪者に仕立て上げた。
周囲の人々は彼女を孤立させ、根も葉もない噂を広げ、
「これでお互いに終わりにしましょう」
そう迫った。
けれど、茜は最後まで冷静だった。
傷つかなかったわけじゃない。
ただ――
もう悲しむ時間すら惜しかった。
彼女の頭の中にあるのは、論文のデータと奨学金のことばかりだった。
そんなある日。
一つのお見合いで、彼女は一人の男と出会う。
毎日のようにクーポンを研究している、極端な倹約家。
口を開けば嫌味の応酬。
なのに、なぜか一緒にいると心地いい。
そんな不思議な関係が始まった。
そして、茜を侮辱するために開かれたお見合いの席。
相手が激昂し、彼女に手を上げようとした瞬間――
その拳を、後ろから現れた男が軽々と受け止めた。
そして、からかうように笑う。
「その気の強さ……誰に似たんだろうな」
その場で――
1122万円の賠償が成立した。
会場中が騒然となった。
後になって茜は知る。
毎日細かく値引きを計算し、クーポンを集めていたその男こそ――
本当に巨大財閥の実権を握る人物だった。
そして、彼女の彼氏を奪ったルームメイトが必死に取り入ろうとしていた“名門一族”は、
実際には彼の一族の力で成り立っていた、ただの空っぽの看板だった。
ネットでの炎上。
個人情報の流出。
人前での侮辱。
茜は一つずつ、すべてを乗り越えてきた。
最後にすべてを失い、誰からも見放されたのは――
彼女から大切なものを奪おうとした側だった。
そして。
ずっと彼女の隣に立ち続けた人だけは、
一度も変わらなかった。