私を一年間愛人として囲った彼の正体は、結婚式から逃げた顔も知らない婚約者でした
イカバーガー
恋愛現代恋愛
2026年08月04日
公開日
2.2万字
連載中
雅世は、一年間、彼にとって“人に見せられない女”だった。
東京の高級マンションで暮らし、深夜に帰ってくる彼を待つ日々。
東京では、彼女の名前は「雅代」と呼ばれていた。
そんなある日。
和弘の母親が、一枚の白紙小切手を差し出した。
まるでゴミを見るような目で、彼女に言う。
「このお金を持って、息子の前から消えてちょうだい」
雅世は、その小切手を受け取らなかった。
ただ静かに荷物をまとめて――
跡形もなく姿を消した。
大阪の実家へ戻った彼女を待っていたのは、父親の言葉だった。
「祖父がお前のために縁談を決めていた」
「相手は中嶋家の長男だ」
雅世は少しだけ安心した。
どうせ婚約は断るつもりだった。
もう誰かと結婚する気なんてなかったから。
けれど――
父親が告げた名前を聞いた瞬間。
彼女の時間が止まった。
「中嶋和弘」
その名前は――
一年間、自分を囲っていた男。
命懸けで逃げようとした相手。
まさか彼が。
自分の運命の婚約者だったなんて。
婚約破棄のための席。
雅世は震える声で言った。
「……私は、この結婚を望みません」
誰もが終わりだと思った。
けれど次の瞬間。
和弘は立ち上がった。
そして、全員の前で堂々と言った。
「俺は――彼女と結婚する」