完璧な社長夫は結婚後一度も私に触れなかった――初恋の女性が戻った日、彼は跪いて「愛している」と告げた
ゴドー
恋愛現代恋愛
2026年08月06日
公開日
2.4万字
連載中
岩永梨乃は、古川和哉と結婚した日。
ようやく十年間の片想いが叶ったのだと思っていた。
――けれど。
新婚初夜。
白いレースのナイトウェアを着た彼女を見た和哉は、寝室の入口で一瞬だけ立ち止まり、淡々と言った。
「俺は書斎で寝る」
そして、そのまま背を向けて去っていった。
それから一年。
梨乃は四十七回、手作りの弁当を作った。
けれど、彼は一度も持って行かなかった。
彼が熱を出した夜。
梨乃がそっと手を握ると、彼は三秒だけ固まり――
一本ずつ、彼女の指をほどいて手を離した。
リビングで、あの夜着のまま深夜まで彼を待った日。
帰宅した和哉は、彼女を一目見ることもなく、そのまま書斎へ向かった。
梨乃は思っていた。
彼は私を愛していない。
心の中には、別の誰かがいる。
この結婚は、最初から間違いだったのだと。
大学時代からの親友でさえ、毎日のように彼女へ言った。
「絶対に浮気してるよ」
「初恋の人が戻ってきたんじゃない?」
「もう一ヶ月も家に帰ってきてないんでしょ?」
梨乃は、そう信じるしかなかった。
――あの日までは。
和哉の金庫の中から、一冊の古いノートを見つけるまでは。
そこには、彼女が十五歳の頃からのすべての大切な出来事が記されていた。
初めて会った日のこと。
笑った顔。
好きな食べ物。
小さな変化まで。
まるで、彼女の人生そのものを大切に残しているようだった。
そして最後のページ。
そこに書かれていたのは、たった一言。
――
「俺は彼女より九歳も年上だ」
「こんなに歳が離れている俺が、彼女に相応しいわけがない」
「どうすれば若返れるんだろう」
「……誰か、方法を教えてくれ」