愛人の初恋相手と争った日、彼が彼女を選んだ瞬間――私は別れを告げた。なのに彼は後悔に狂った
バイオファー
恋愛現代恋愛
2026年08月12日
公開日
2.5万字
連載中
誰もが思っていた。
西本由季は、中山幸司の力で成り上がった“籠の鳥”なのだと。
ある晩餐会で、佐々木詩織は大勢の前で彼女を罵った。
「所詮、あなたは元はただのホステスでしょう?」
由季は迷わず、その頬を叩いた。
中山が慌てて彼女を引き離した瞬間。
誰も気づかなかった。
佐々木の爪が、あと三センチで由季の目に届いていたことを。
さらに世間は、由季が監督を誘惑したと報じた。
しかし完全な監視映像が公開された後、誰もが知ることになる。
先に侮辱したのは佐々木だった。
彼女は由季の父親に向かって言った。
「足が不自由になったのは、罰が当たっただけよ」
由季には、夜の店から逃げ出すための後ろ盾が必要だった。
幸司には、家族からの結婚催促をかわすための偽りの相手が必要だった。
二人の関係は、ただの契約だったはず。
三年間。
由季は彼を「中山社長」と呼んだ。
幸司は彼女を「西本さん」と呼んだ。
同じマンションに住みながら、部屋は別々。
「おはよう」
「おやすみ」
その言葉さえ、まるで仕事の挨拶のようだった。
けれど、ある授賞式の日。
中山幸司はプレゼンターとしてステージに上がった。
彼はいつものように言った。
「西本さん」
その瞬間。
由季は会場中のメディアの前で微笑んだ。
「できれば、別の呼び方で表彰していただきたいです」
静まり返る会場。
そして――
幸司は彼女を見つめ、言い直した。
「……私の婚約者です」
その瞬間、会場は騒然となった。
その夜、検索ランキング一位になったのは最優秀主演女優賞ではなかった。
誰もが注目したのは――
彼女の薬指に輝く、スポンサー提供品ではない一つの指輪だった。
これは、ただの演技なのか?
違う。
彼女は金絲雀なんかじゃない。
彼女こそ――
財閥後継者・中山幸司が三年間かけて、ようやく手に入れた唯一の女性だった。