政略結婚の相手は盲目のふりをした大物でした!?――じゃあ、家で服を着ずに過ごしていた私はもう終わりです
ゴドー
恋愛現代恋愛
2026年08月13日
公開日
2.2万字
連載中
京は父から、家業が破産したと告げられた。
そして、会ったこともない盲目の男に嫁がなければならないと言われる。
すべてを受け入れるしかなかった。
――あの日、部屋のエアコンが壊れるまでは。
暑さに耐えきれず、京は家で服を脱いで過ごしていた。
そこへ夫が帰ってくる。
けれど相手は盲目のはずだ。
そう思った京は、つい彼の目の前まで行き、手をひらひらと振ってみせた。
すると。
彼の耳が、赤く染まった。
その瞬間、京は気づいてしまう。
夫・樋口雅之の目は、見えていないのではない。
彼は――盲目のふりをしていただけだった。
京は騙されていた。
計算され、従順な妻として、この結婚に押し込められていた。
さらに皮肉なことに。
彼女が三年間片想いしていた先輩・佐々木悠真は、かつて破り捨てられた一通のラブレターをきっかけに京と決裂し、今でも彼女に冷たい視線を向けていた。
そして父が危篤で入院した時。
京はようやく知る。
家業の“破産”など、最初から嘘だったのだと。
父は末期の胃がんだった。
自分がいなくなる前に娘の行き先を整えておきたくて、父のほうから樋口家に縁談を願い出ていたのだ。
京は運命に押し流されていた。
どの一歩も、自分の意思では選べなかった。
けれど――
雅之の書斎で、高校時代の自分の写真を見つけた時。
すべてが反転し始める。
写真の裏には、一行だけ文字が記されていた。
「平成三十年、夏。」
それは、京が十六歳だった夏。
そして、彼女が水に落ち、誰かに救われたあの日だった。
彼女を助けたのは、佐々木悠真ではなかった。
最初からずっと――
彼女が一度もまともに見ようとしなかった転校生。
樋口雅之だった。