私の夫を奪った親友は、勝ったつもりだった――でも彼女が人生を捨てて手に入れた豪邸の家族は、全部偽物だった
真祖
恋愛結婚生活
2026年08月17日
公開日
3.2万字
連載中
理沙は思っていた。
この人生で一番の幸運は、代官山で阿倍綾乃と出会えたことだと。
雑誌のインタビューで「毎月のお小遣いは百万円」と笑顔で語る、誰もが羨む専業主婦。
理沙は綾乃のすべてを覚えた。
愛用する口紅の色。
身につけるイヤリング。
ネイルのデザイン。
そして、彼女の夫の名前――弓削蓮司。
品川での仕事を辞め、夏のボーナスも会社の保険も手放した。
広尾に高級マンションを借り、綾乃の「義母」には翡翠の腕輪を贈り、「娘」には限定文房具をプレゼントした。
すべては、弓削家の女主人になるため。
「努力すれば、いつか私も綾乃のようになれる」
そう信じていた。
しかし――。
ある日。
綾乃の「娘」美優が、キッチンの前に立って首を傾げた。
「佐伯さん……どうしてまだ帰らないんですか?」
その言葉をきっかけに、理沙は真実を知る。
日比谷高校に通っているはずの「娘」は、二年前にすでに卒業していた。
電子企業の研究開発部で働いているはずの「夫」は、まったく違う仕事をしていた。
彼の本当の姿は――。
薄暗い照明の下で踊る、人気インフルエンサーだった。
理沙が貯金をすべて使い、必死に入り込もうとした「あの家庭」は。
最初から、存在していなかった。