クズな元彼が親友と浮気した日、私は彼の弟と結婚した――そして結婚式の日、彼は子どものように泣き崩れた
Fujii
恋愛現代恋愛
2026年08月17日
公開日
2.4万字
連載中
結婚して三年。中島絵理は、完璧な妻を演じ続けていた。
夫・西村正樹がパーティーで別の女性を抱き寄せても、
彼女は微笑みながら言う。
「仕事上のお付き合いですから」
夫が何日も帰って来なくても、
二人分の夕食を一人で静かに食べた。
けれど、ある日。
夫のスマートフォンに届いた一通のメッセージを見てしまう。
「あの人は、やっぱりあなたには敵わない。私が愛しているのは、あなただけ」
送り主は、夫の愛人だった。
絵理は泣かなかった。
静かに画面を保存し、一枚のスクリーンショットを残す。
そして、一つの番号へ電話をかけた。
相手は――
夫の親友、黒木幸治。
絵理は短く言った。
「離婚に協力してください。条件はあなたが決めて」
幸治は迷いなく答える。
「分かった」
「条件なら、もう決めてある」
三か月後。
西村正樹は経済ニュースで、一枚の写真を目にする。
そこには元妻・中島絵理がいた。
そして彼女の薬指へ、
黒木幸治が婚約指輪をはめている瞬間が映し出されていた。
正樹は信じ切っていた。
中島絵理は、自分から離れられない女だと。
旧華族の令嬢。
穏やかで、品があり、
決して感情的にならない理想の妻。
だから安心して愛人を作った。
安心して彼女を一人ぼっちにした。
安心して、彼女は一生耐え続けるのだと思っていた。
だが、離婚して初めて気づく。
自分の“親友”は、
ずっと前から彼女だけを見ていたことに。
幸治は笑いながら言った。
「お前さ、本当に面白いよな」
「自分が好きな女を嫁にしないで――」
「俺が好きだった女を妻にしておいて、今さら何を騒いでるんだ?」
その一言で、
西村正樹はようやく理解した。
失ったのは、妻だけではない。
親友も。
そして、二度と取り戻せない人生そのものだった。