お人好しだった私は前世で殺された――だから死に戻った今世は、クズ夫と父を刑務所へ送り、初恋の彼を最高の夫に育てます
Nettō
恋愛現代恋愛
2026年08月20日
公開日
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連載中
黒木香澄は、前世で雪の降る夜に死んだ。
四十度の高熱にうなされながら布団の中で小さく身体を丸め、枕元のスマートフォンを何度も手に取る。連絡先の一番上に登録されていたのは夫・浅井英明。三度電話をかけたが、一度も繋がらなかった。
後になって知る。あの夜、彼は訓練場にいて、スマートフォンはロッカーの中。そして彼は、香澄の姉・綾乃の写真を見つめながら、一人で欲望を慰めていた。
父・黒木隆一は東京を代表する黒木グループの総帥だったが、香澄を政略結婚の駒としか見ていなかった。姉の綾乃もすべてを知りながら、最後まで何も言わなかった。
香澄が唯一「愛されている証」だと思っていた神社のお守りでさえ、本当は別の女性に贈るはずだったものだった。相手に受け取ってもらえず、仕方なく彼女へ回ってきただけ。その事実を、香澄は綾乃の口から聞かされる。
英明が本当に想い続けていた相手は、最初から綾乃だった。
二十五歳。香澄は誰にも気づかれることなく、高熱のまま息を引き取った。
誰もが「精神年齢は八歳のままだから仕方ない」と言った。けれど八歳で時が止まってしまったのは、姉をかばって交通事故に遭った後遺症のせいだった。
目を開けると、香澄は二十歳に戻っていた。父が自分と姉、それぞれの結婚相手を決める、あの日に。
今度こそ、もうあの家には残らない。自分を決して見てくれない男にも嫁がない。黒木家の駒として生きる人生も選ばない。
香澄は京都行きの切符を買った。
そこには母方の祖父がいる。前世では手にできなかった自由がある。そして、前世では出会うことすら叶わなかった、たった一人の運命の人が待っていた。