初恋の彼女の願いを叶えるため、結婚式を三度も延期した婚約者――私は黙って証拠を集め、最後は彼の宿敵の花嫁になりました
毒ゼリー
恋愛現代恋愛
2026年08月21日
公開日
2.7万字
連載中
竹下雪絵は、婚約者にとって“病弱な想い人の身代わり”だった。
三年間。
宴会の席で紹介される時、彼女はいつも「遠縁の娘」と呼ばれた。
婚約期間は三度も延期された。
そのたびに雪絵は笑って言った。
「大丈夫です」
彼は妹の名前を借りてプロポーズした。
けれど友人には、こう話していた。
「桜子と同じ屋根の下で暮らせるなら、誰と結婚しても同じだ」
北原洋介が雪絵と結婚する理由。
それはただ一つ。
彼女の家で、本当に愛している女性と一緒にいるためだった。
つまり――
雪絵はただの切符。
北原洋介の愛する人のもとへ向かうための、ただの道だった。
彼女は知らないふりをした。
ずっと、知らないふりをし続けた。
けれど、ある日。
弓道大会で勝ち取った大切な真珠の指輪を、彼が勝手に取り戻して返していたことを知る。
車の中で、雪絵はバックミラー越しに見た。
返された指輪を見つめる彼の姿を。
そして彼が無意識に、何もない自分の薬指を撫でていることを。
その瞬間、彼女は理解した。
誰も自分を救ってはくれない。
自分を救えるのは、自分だけだ。
だから雪絵は集めた。
二十七個の記録。
三つの録音。
二枚のメッセージ画面の証拠。
そして、婚姻届には自分の手で、別の男の姓を書いた。
後になって、雪絵は知ることになる。
あの返された真珠の指輪を――
ある一人の男が、二年間ずっと大切に預かっていたことを。