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四十度の猛暑の中、十八万円の料理を届けた私を待っていたのは、貧困とうつ病を装っていた御曹司の彼氏だった
四十度の猛暑の中、十八万円の料理を届けた私を待っていたのは、貧困とうつ病を装っていた御曹司の彼氏だった
Ken to tate
恋愛現代恋愛
2026年08月24日
公開日
9.3万字
完結済
東京では、四日連続の猛暑警報が出ていた。 路面温度は、三十九・八度。 高橋楓は深夜四時から昼まで料理を作り続け、睡眠時間はわずか一時間。 それでも彼女は、十八万円の高額料理の注文を引き受けた。 受取人から追加された千円のチップを見て、楓は思った。 これで蓮根とスペアリブの材料が買える、と。 田園調布の重厚な門が開いた。 その先に立っていたのは―― 一年間、彼女が支え続けてきた恋人だった。 「家賃が払えない」 「毎月十四万円の治療費が必要だ」 「一人では電車にも乗れない」 そう言って、彼女の優しさに甘えていた男。 けれど、家の中にいた女が告げた。 「彼は本当に病気だったわけじゃない」 「貧しいふりをして、あなたに支えさせていただけ」 楓は初めて知った。 自分が必死に守ってきた恋人は―― 何不自由ない暮らしをしてきた御曹司だった。 この偽りの始まりは、彼女の弟の葬儀だった。 弟を救えなかったという罪悪感を抱え続ける楓。 彼はその傷を利用し、彼女の優しさにつけ込んでいた。 楓は配達用ヘルメットを外し、床へ叩きつけた。 差し出された補償金のカードを、彼女は受け取った。 「私が受け取るのは、あなたが返すべきもの」 「許したわけじゃない」 その夜。 楓は二年間、弟の遺品箱にかけられていた鍵を手に入れた。 その中に眠っていたのは―― 彼女が知らなかった、弟の最後の真実だった。

第1話 高温の注文

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