復縁はお断りです。元夫が跪いても、私はもう他の人の妻なので
南山みなみ
恋愛現代恋愛
2026年08月31日
公開日
3.6万字
連載中
六年も追いかけ続けてくれた男と、ようやく結婚した。
それなのに、結婚から一年も経たないうちに――私は夫と、自分の教え子の不倫を疑うことになった。
四方弓弦が、私――鹿取茜を命よりも大切にしている。
それは、誰もが知っていることだった。
六年間、一日も欠かさず花を贈り続け、私が舞台に立つ日は、どれほど忙しくても必ず会場へ足を運んでくれた。
事故に遭ったあの日だって、自分の命も顧みず私をかばい、大怪我まで負った。
だから、私も信じていた。
この世の誰が私を裏切っても、弓弦だけは絶対に裏切らない。
――あの匿名メッセージが届くまでは。
『品行方正で、女遊びなんて一切しない四方先生が、裏ではどれだけ激しいか……知りたくない?』
指定された稽古場へ向かうと、中から聞こえてきたのは、男女のただならぬ気配だった。
そして、その扉から出てきたのは――
私が三年間、大切に育ててきた教え子の澪。
彼女の手首には、鮮やかな深緑の翡翠のバングルが輝いていた。
ひと目で分かった。
最高級のろうかん翡翠。
しかもそれは、弓弦が今回の出張先のオークションで、私のために落札したと聞かされていたものと、まったく同じだった。
そしてその時間、弓弦は私からの電話に出なかった。
それでも、家に帰れば彼は何ひとつ変わらない。
私の体調を気遣い、温かい飲み物を用意し、火傷をすれば自分の手で薬まで塗ってくれる。
いつもと同じ優しい顔で、こんなことまで言った。
「浮気するような男は最低だよな」
――そんな彼が、その夜、初めて私に嘘をついた。
さっきの電話は、仕事のことで近衛悠玄と話していた。
弓弦は、そう言った。
だったら――確かめればいい。
私はその場で、何年も連絡を取っていなかった近衛先輩の番号を呼び出した。
もう使われていないかもしれない。
そう思っていた番号は、驚くほどあっさりとつながった。
『……鹿取?』
受話器の向こうから聞こえてきたのは、昔と変わらない低い声。
そして彼が呼んだのは、結婚後の名字ではなく――
私の旧姓だった。
その瞬間、私はようやく気づいた。
男が本当に自分を愛しているかどうかなんて、甘い言葉だけでは分からない。
大切なのは、自分の見ていないところで、その人が何をしているか。
見るべきなのは、そこだった。
六年