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死に戻った私は、潔癖すぎる婚約者を捨てて、彼の宿敵に結婚を申し込みました
死に戻った私は、潔癖すぎる婚約者を捨てて、彼の宿敵に結婚を申し込みました
有機タマネギ
恋愛現代恋愛
2026年08月25日
公開日
2.7万字
連載中
九条明希は、ずっと思っていた。 どれだけ聞き分けのいい娘でいれば、あの家で生きていけるのだろうと。 母親が盗みの濡れ衣を着せられ、九条家から追い出された日。 明希は九条家の門の前で、三時間も跪き続けた。 額を地面に打ちつけながら、父に懇願した。 「お願いだから、私をここに置いてください」 けれど、誰も門を開けなかった。 数日後。 彼女のもとに届いたのは――母親が拷問の末に命を落としたという知らせだった。 前世の明希は、いつか幸せになれる未来を手に入れるため、必死に父へ媚び続けた。 そして藤原家の長男と結婚した。 結婚後も、完璧な妻を演じ続けた。 夫に嫌われないように。 家族に認められるように。 すべてを我慢した。 けれど、夫の姉が夫を亡くした悲しみを訴えた日から、すべてが変わった。 かつては誰よりも愛し合っていたはずの夫は、いつしか明希を憎むようになった。 「お前は目的のためなら何でもする女だ」 「本当に気持ち悪い」 そう言われた。 そして離婚後、彼は明希の姉を妻に迎えた。 すべてを奪われた明希は、誰にも救われることなく、静かに消耗して命を終えた。 あの夜。 明希はようやく理解した。 この世界には、誰も自分を救ってくれる人なんていない。 ――あの人を除いて。 誰もが彼女を蔑んでいた時、黙って一本の傘を差し出してくれた貧しい男。 彼女が深い水の中へ突き落とされた時、迷わず飛び込み、抱きしめてくれた男。 古びたアパートの一室で、銀色のシンプルな指輪を差し出し、彼女にプロポーズした愚かなほど優しい男。 彼は言った。 「君が地獄へ行くなら、俺も一緒に行く」 けれど明希は、彼に言わなかった。 自分はもう―― 一度、地獄から這い戻ってきた人間なのだと。 もう一度人生をやり直した明希は、自分を傷つけたすべての人間へ復讐を果たした。 その夜。 彼女の姿を黒沢照が見ていた。 明希は、自分があまりにも醜く見えた。 きっと彼にも嫌われる。 もう結婚したいなんて思ってくれない。 そう考えて、彼の手を避けた。 けれど。 その男は、彼女にそっと口づけた。 そして彼女の手を握りしめ、優しく言った。 「一緒に逃げよう」 「誰にも見つからない場所へ行こう」

第1話 生まれ変わった私は前夫との結婚を拒む

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