元恋人を五年間支えた法医学者の私――財閥令嬢になった日、私を「汚れた存在」と捨てた彼は後悔した
Bagutta Jinsei
恋愛現代恋愛
2026年08月26日
公開日
2.6万字
連載中
五年間。
彼は、私が借りた部屋に住み、私が支払った治療費で生きていた。
偽造した診断書を見せながら、
「いつ死んでもおかしくない」
そう言って、私を縛り続けた。
私は法医学者として夜勤を終えた後も、彼の薬を受け取りに行った。
そんな生活を、五年間続けた。
けれど――。
十二台のトヨタ・センチュリーが彼を迎えに来た日。
彼はカメラの前で、私を見下ろして言った。
「解剖刀を握るような人間だ」
「そんな仕事をする女とは、もう関係ない」
そして、私たちはただ生活を助け合っていただけだと、平然と言い放った。
彼が差し出したのは、一千万円の小切手。
「この五年間の清算だ」
私はそれを受け取った。
ただし――九百九十八万円だけ。
残り二万円は、もう彼に返すものがなかったから。
その後。
彼は私を誘拐し、懲役十年の判決を受けた。
判決の日。
私は軽井沢で、別の男性と結婚していた。
私の隣に立っていたのは――。
十二年間、私を探し続けてくれた人。
顔に傷を残した少年は、今では検察官になっていた。
彼は一度も、私の職業を汚いものだと言わなかった。
一度も、私を一人で世間の前に立たせなかった。
私を捨てた過去の男ではなく。
私のすべてを受け入れてくれる人と、私はこれからの人生を歩いていく。