シャオラン
恋愛現代恋愛
2026年08月31日
公開日
8.6万字
連載中
彩寧はずっと信じていた。
自分がもっと良い妻でいれば、いつか朔也は自分を愛してくれるのだと。
三年間の結婚生活の中で、彩寧は誰よりも従順な妻だった。
公にしたくないと言われれば、彼女は名前も隠して影の妻になった。
子どもはいらないと言われれば、何度も避妊薬を飲み続け、二度と母親になれないかもしれない身体になっても耐えた。
彼の言葉をすべて正しいと信じ、愛されるために自分のすべてを捨てた。
ただ一心に、九条夫人として彼の隣にいることだけを願っていた。
けれど、彼女が手に入れたものは愛ではなかった。
朔也は、初恋の相手・美月のためなら何度でも彩寧を置き去りにした。
二人が寄り添う姿は何度も噂になり、彩寧の存在など最初からなかったかのようだった。
そしてある夜――。
家族が命の危機に陥り、すぐに大金が必要になった時も、朔也は彼女に手を差し伸べなかった。
彼が選んだのは、彩寧ではなく、美月の誕生日を祝うための莫大な出費だった。
その瞬間、彩寧はようやく気づいた。
愛は、どれだけ尽くしても手に入るものではない。
どれだけ心を捧げても、冷めた心を温めることはできないのだと。
彼女の瞳から、最後の光が消えた。
一枚の離婚届を残し、家族の遺骨を抱えた彩寧は、朔也の世界から静かに姿を消した。
もう二度と振り返らない――そう決めたはずだった。
しかし、彼女を失った朔也は、まるで別人のように彼女を追い求める。
「彩寧……俺と離婚して、誰と結婚するつもりだ?」
彼は彼女を強く抱きしめ、狂おしいほどの執着を見せる。
「この先ずっと、お前は九条夫人だ」