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自閉症の画家を十年支えた私――彼に救いが訪れ、私は捨てられた。が、私の結婚後、彼は泣いて許しを乞うた
自閉症の画家を十年支えた私――彼に救いが訪れ、私は捨てられた。が、私の結婚後、彼は泣いて許しを乞うた
Nettō
恋愛現代恋愛
2026年08月27日
公開日
2.4万字
連載中
水玉家で十年間、星島礼は一人の自閉症の画家の世話をしてきた。 彼は一度も彼女を見なかった。 一度も彼女に触れなかった。 そして、一度も「ありがとう」と言ってくれなかった。 礼は思っていた。 これが、彼のすべてなのだと。 けれど――橘紗耶香という女性が現れてから、すべてが変わった。 たった三ヶ月。 彼は彼女からの贈り物を受け取り、「ありがとう」と口にした。 それどころか、彼女の肖像画を見つめながら、礼が一度も見たことのない笑顔を浮かべた。 礼の誕生日。 紗耶香は彼のために個展を開いた。 彼は大勢の人の前で紗耶香の隣に立ち、周囲から「彼女が婚約者なのか」と言われても否定しなかった。 その日、礼は一人で台所に立った。 自分のために一杯の麺を作り、食べ終わると、残った器を捨て、綺麗に洗った。 そして水玉夫人の部屋をノックした。 「……家を出たいです」 後になって、彼は下北沢まで彼女を追いかけた。 遠くから彼女を見つめ、ようやく口にした言葉は一つだけだった。 「……痩せたね」 礼は赤く潤んだ目で答えた。 「あなたには関係ないです」 彼は知らなかった。 五年間かけて描いた、彼女の後ろ姿と桜の絵。 彼女の名前で埋め尽くされたノート。 何度も練習したのに、どうしても言えなかった言葉。 「行かないで」 そのすべてを。 彼は十年かけて、ようやく理解した。 自分はずっと前から、彼女なしでは生きられなかったのだと。 言えなかった「好き」という一言は―― 数え切れないほどの涙になって溢れた。

第1話 彼女の後任として来た人

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