冨樫悟
恋愛現代恋愛
2026年08月27日
公開日
3,935字
連載中
書けなくなった小説家・鈴川雅人。
新人賞を受賞し、作家として歩き始めたはずの彼は、いつしか言葉を失い、白いページを前に立ち止まっていた。
そんな雅人が、いつもの小さなカフェで出会ったのは、窓辺でスケッチブックを開く女性・山城梓。
ふと目が合った瞬間、彼女が見せた小さな微笑み。
ただ、それだけだった。
けれど、その微笑みを境に、止まっていた雅人の世界が少しずつ動き始める。
視線を交わすこと。
名前を知ること。
名前を呼ぶこと。
声を届けること。
そして、雅人の「言葉」と梓の「線」は、ゆっくりと互いの世界へ触れていく。
近づきすぎれば壊れてしまうかもしれない。
離れすぎれば届かない。
だから二人は、急がず、立ち止まり、ときにすれ違いながら、自分たちだけの距離を探していく。
恋とは、誰かを手に入れることなのだろうか。
それとも、誰かが自分らしい場所へ戻れるよう、そっと合図を送り続けることなのだろうか。
一杯のコーヒー。
窓から差し込む光。
紙に残された線。
言葉にならない想い。
そして、何度も交わされる小さな微笑み。
これは、ひとつの微笑みから始まった、
「書く人」と「描く人」の、静かでやさしい恋の物語。
あなたにもきっと、忘れられない「微笑み」がある。