私がやらかして、あなたが拍手する――政略結婚の夫は、まさか私に10年間も片想いしていた腐れ縁の幼なじみ
まるまる
恋愛結婚生活
2026年09月07日
公開日
3.8万字
連載中
白金台の雨の夜、九条沙耶は家族に呼び戻され、目の前に一枚の婚約書を突きつけられた。
父親は共同事業、持ち株、そして一族の信用を盾に、彼女を宿敵・冬月湊との政略結婚へと追い込んだ。
沙耶は、わざと席を間違えたり、あぐらをかいて食事をしたり、手すりに逆さまにぶら下がって同音異義語をわざと並べ立てたり――あらゆる方法で、この縁談をぶち壊そうとした。
ところが彼は、一族の年長者たちの前で彼女に拍手を送り、勇敢だと褒め称えた。
結婚後、姓まで強制的に変えられ、名刺には見慣れない「冬月沙耶」の文字が印刷された。
健康保険証も、銀行の登録情報も、企業の登記も――目に入るものすべてが、彼女が二つの家の取引の駒にすぎないことを突きつけてくる。
何より皮肉だったのは、夫が自ら差し出した「二年間の約束」だった。
体裁だけは保ち、互いに干渉しない。二年後には、離婚できる。
彼は言った。
「愛だけは、そこに含まれていない」
沙耶はそれを受け入れた。
だがある日、彼が金庫にしまい込んでいた古い書類を見つける。
その受益者欄に書かれていたのは、彼女の名前。
日付は、彼女が大学一年生だった頃だった。
――彼は10年も前から、遺言とすべての財産を彼女に残していた。
この結婚は、最初から最後まで、彼が密かに仕組んだものだった。