夫が愛人と隠し子を連れ帰り「二人の面倒を見ろ」と言った――弱いと思っていた義姉が扉を蹴破り、一瞬で追い出した
ポポ
恋愛現代恋愛
2026年09月07日
公開日
3万字
連載中
芽依は、兄である桐原玲司のことを、全日本で最年少の医学部教授、剣道全国大会優勝者、医療テクノロジー企業の創業者――何もかも完璧な人間だと思っていた。
唯一の欠点があるとすれば、それは東雲静と結婚したことだった。
あの女は、宝石箱一つまともに持てない。外に出れば風を怖がり、人の視線を恐れる。そんな彼女と一緒に歩くだけで恥ずかしいと思っていた。
芽依は、あんな女性が兄の妻として人前に立てるはずがないと思っていた。
けれど桐原芽依は、まさか自分が結婚初夜に夫から笑顔で告げられるなんて想像もしていなかった。
「酒の中に薬を入れた」
「もう君は、子どもを産めない」
さらに、夫の愛人が三歳の子どもの手を引いて現れ、自分の前に跪かせた。
「早く、お母さんって呼んで」
芽依は抵抗した。
黒瀬隼人を平手打ちした。
けれど返ってきたのは、義母・黒瀬玲子の冷たい笑いだった。
「嫁いできた初日に手を上げるなんて」
「桐原家の躾というものを、初めて見せてもらったわ」
兄が駆けつけた。
「お前は何も悪くない」
「どうして我慢する必要があるんだ」
そう言ってくれた。
けれどその直後。
ホテルのロビーで、黒瀬家の手下たちによって地面へ押さえつけられ、両足を折られた。
芽依は冷たい大理石の床の上で、兄を抱きしめながら跪いた。
大勢の招待客がいた。
それでも、誰一人声を上げなかった。
助けを求めても。
叫んでも。
誰も来てくれなかった。
その時。
ずっと「か弱くて何もできない」と思っていた義姉が現れた。
巨大な扉を、一撃で蹴り開ける。
その後ろには――
警察の精鋭部隊。
そして世界大会級の格闘家たち。
彼らは全員、彼女の前で静かに頭を下げ、指示を待っていた。
そして、その義姉へこう尋ねた。
「お嬢様」
「この家を、閉めますか?」