東雲社長、足を開いてください――スーツのサイズ確認は完了しました。これで私と結婚してくれますか?
エビいただき
恋愛現代恋愛
2026年09月15日
公開日
2.6万字
連載中
柊晴奈は、銀座・桐生オーダースーツ工房で半年間見習いとして働いていた。
まだ一人で担当した顧客は一人もいない。
そんなある日、店長から告げられた。
「大口のお客様が来る」
「東雲テクノロジーの社長、東雲怜様だ。君を指名している」
晴奈が接客室へ入った瞬間。
その顔を見て、手にしていたメジャーを落としそうになった。
東雲怜。
八年前、自分から別れを告げた元恋人だった。
あの頃の晴奈は彼を傷つけた。
「貧乏すぎる」
「何の才能もない」
「あなたじゃ私を幸せにできない」
そう言って別れを告げた。
連絡先を変え、引っ越しをして。
それ以来、一度も会うことはなかった。
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けれど今の彼は違った。
彼は社長になっていた。
白鷺台の高級邸宅に住み。
オーダーメイドのスーツを身にまとい。
最高級の和牛を食べる。
そんな彼が目の前に立ち、どこか得意げに言った。
「君にチャンスをあげる」
「俺と食事をする機会をね」
晴奈は思った。
復讐しに来たのだと。
自分を後悔させるためなのだと。
金と地位を見せつけて、昔の自分を笑うためなのだと。
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けれど。
彼はなぜか何度も顔を赤くした。
そして、とうとう我慢できなくなったように、彼女を壁際へ追い詰めた。
「君は俺を貧乏だと言った」
「だから、必死で稼いだ」
「君は俺には何の力もないと言った」
「だから、自分で会社を作った」
「君は俺じゃ幸せにできないと言った」
「だから……君に最高の人生をあげられるように、死ぬ気で頑張った」
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晴奈の目に涙が浮かんだ。
「……あなた、本当に馬鹿ね」
彼は少し笑った。
「そうだよ」
「一人の人を八年間も待ち続けるなんて」
「馬鹿じゃなきゃ、できないから」