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二百万円でブサイクな髪型にしてほしいと頼まれた私――親友の財閥婚約者は、五年前に死んだはずの貧乏な元彼だった
二百万円でブサイクな髪型にしてほしいと頼まれた私――親友の財閥婚約者は、五年前に死んだはずの貧乏な元彼だった
抹茶リンゴ
恋愛現代恋愛
2026年09月23日
公開日
2.5万字
連載中
宮下晩子は、五歳の娘を一人で育てていた。 娘が「自分だけのお部屋がほしい」と言った日、晩子は何度も計算した。 でも、その夢を叶えるには、まだ長い時間お金を貯めなければならなかった。 ある日、親友の花村麗奈が「髪を切られて最悪な気分」と愚痴をこぼした。 すると、麗奈の婚約者・九条蒼太の秘書から電話がかかってきた。 「二百万円お支払いします」 「花村様を笑顔にするため、あなたに酷い髪型になっていただきたい」 そう言われた。 晩子は髪を切った。 そして、頭の上に大きな瓜型のボブを乗せたような姿で、高級料亭の個室へ入った。 花村麗奈は腹を抱えて笑った。 写真を撮り、SNSへ投稿する。 コメント欄には、彼女を嘲笑する言葉が溢れた。 けれど。 あの冷たい九条蒼太は……なぜ、亡くなった恋人と同じ顔をしているのだろう。 夜。 花村麗奈は晩子に言った。 「コンビニで避妊具を買ってきて」 「今夜、九条蒼太を落とすから」 晩子はお金を受け取り、ホテルへ向かった。 そこで九条蒼太は彼女に、吐瀉物で汚れた高級ジャケットを洗わせた。 そして、手を見て眉をひそめる。 「君の手、荒れてるな」 「硬いし、古い傷跡もある」 「その手で触ったら、この生地が傷むかもしれない」 晩子は思い出した。 五年前。 深町蒼を養うため、冬の居酒屋の裏方で皿洗いをしていた日々。 凍傷だらけになった彼女の手を見て、深町蒼は涙を流した。 「絶対に、君を幸せにする」 「命をかけても、いい暮らしをさせるから」 そう言ってくれた。 深町蒼は、五年前に死んだ。 晩子は貯金をすべて使い、民間の潜水捜索会社へ依頼した。 五年間。 彼の遺体を探し続けた。 そして今、目の前にいる男。 深町蒼と、まったく同じ顔。 目尻の小さなほくろまで同じだった。 晩子はスマホを取り出した。 匿名告発掲示板を開く。 そこにあった人気投稿のタイトル。 「貧乏なふりをして普通の女の子を落とした後、どうやって綺麗に別れるか」 一番上のコメントには、こう書かれていた。 「死んだことにする」 晩子はその画面を保存した。 そして鏡に映る、赤く腫れた自分の目を見つめる。 「宮下晩子」 「もう、夢から覚める時間よ」

第1話 スイカ頭と200万円

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