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愛する人の忠犬として十年耐えた私――死に戻り、恩人を間違えていたと気づいた。本当に愛していたのは、彼の弟だった
愛する人の忠犬として十年耐えた私――死に戻り、恩人を間違えていたと気づいた。本当に愛していたのは、彼の弟だった
Shinonome
恋愛現代恋愛
2026年09月28日
公開日
2.2万字
連載中
逸希の人生は、静臣のために捧げた十年間だった。 彼の代わりに刃を受け、命を懸けて守った。 言われたことには何でも従った。 十年間、彼の秘書として働き続けた。 そして十年間―― 彼のために尽くす“犬”だった。 彼の罪を代わりに背負った。 彼の代わりに殴られた。 彼のためなら、どんなことでもした。 なぜなら十八歳のあの日。 自分を救ってくれた人は、静臣だと思っていたから。 けれど後になって。 静臣は、たった一つの取引のために彼女を港区の会員制クラブの男へ差し出した。 静臣は高い場所から彼女を見下ろし、嫌悪を隠さず言った。 「お前が十年間ずっと俺のそばにいたと思うと……吐き気がする」 彼女は部屋へ連れて行かれ、壊れる寸前まで傷つけられた。 そして最後には、港へ捨てられた。 死ぬ直前。 逸希はぼんやりと見た。 あの人が必死に駆け寄り、泣きながら叫んでいる姿を。 けれど、もう彼女には力が残っていなかった。 もし、もう一度人生をやり直せるなら。 今度こそ、彼には出会いたくない。 そう願った。 十八歳。 あの夜、初めてバーで出会った日に戻った。 逸希は決めた。 もう恩は返した。 もう誰にも借りは作らない。 そう思い、彼女は自分を救ってくれた少年へ声をかけた。 しかし警備員が先に答えた。 「うちの坊ちゃまは、鷹宮雅臣様です」 少年は否定しなかった。 けれど後になって、彼女は知ることになる。 本当の恩人は、鷹宮家に隠されていた私生子。 “予備の心臓”として扱われていた少年―― 汐見澪だった。 二度目の人生で。 逸希は窓から彼の部屋へ入り、プログラムを教えた。 白粥と梅干しを持って行った。 手術の時には彼を守った。 母親の墓を移す時も、ずっとそばにいた。 合格発表の日の夜。 春雨が降る中。 電話の向こうから、あの声が聞こえた。 「帰りに梅干しを買ってきて」 逸希は笑った。 もう二度と。 この手を離さない。

第1話 今度こそ、終わりだ

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