浮気彼氏に黒タイツを破られた日、ずっと私を想うルームメイトが財閥御曹司の正体を明かし、密かに私の隣の座を奪った。
Goya
恋愛現代恋愛
2026年09月30日
公開日
2.7万字
連載中
山田心春は、ずっと思っていた。
きっと、自分が自意識過剰なだけなのだと。
彼氏のルームメイト・久世和樹は、いつも風呂上がりに一枚のバスタオルだけを腰に巻いて出てくる。
鍛えられた腹筋は隠れることなく、はっきり見えていた。
こたつの中で彼の足が彼女に触れても、彼は決して離そうとしなかった。
送られてくる写真には、鏡越しに映る腹筋と、低い位置で巻かれたバスタオルがいつも写り込んでいた。
心春は自分を「恋愛脳すぎる」と責めながら、必死に距離を取っていた。
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そんな彼女が真実を知ったのは、篠原の浮気と、彼からの強引な迫り方から逃れられなくなった時だった。
久世が扉を開け、彼女を助けに来た。
そして心春を若葉坂にある自分の家へ連れて行った。
ついに我慢できなくなった心春は、口にした。
「久世さん……もしかして、私を口説いているんですか?」
久世は逆に問い返した。
「とっくに気づいていたんだろ?」
「どうして何の反応もしなかった?」
「俺と篠原は兄弟なんかじゃない」
「せいぜい、ただのルームメイトだ」
「君がいなかったら、とっくに引っ越していたよ」
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後になって、心春は知ることになる。
久世和樹の本当の正体は、久世建設の後継者だった。
彼はただ、自分の会社で現場を知るために、下積みから経験を積んでいたのだ。
そして篠原との三年間のルームシェアも、すべて周囲を欺くためのものだった。
けれど――
初めて会った時。
心春が何気なく彼によそった一杯のご飯。
その優しさだけが理由で、彼はもう離れることができなくなっていた。
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そして後日。
彼は心春のスマホを取り上げ、彼女の両親へ丁寧な言葉遣いのまま、決して譲らない強い態度で告げた。
その後、こっそり五百万円が入った銀行カードを彼女の手の中へ押し込んだ。
心春はカードを握りしめ、彼を見上げた。
久世は気まずそうに顔を背ける。
けれど、耳は真っ赤になっていた。
それは心春が初めて、自分から彼へ近づいた瞬間だった。
そして――
彼女はそっと、彼の唇の端へキスをした。
第1話 彼氏のルームメイトと、手仕事の現場に鉢合わせ