夫が私をいじめていた女性秘書と親密になった――回避型の私は迷わず海外へ逃げ、残された彼は後悔に狂った
Isekai
恋愛現代恋愛
2026年10月13日
公開日
2.6万字
連載中
私は重度の回避型人格だった。
夫が一日連絡をくれないだけで、私は既読通知をオフにした。
まるで最初からメッセージなんて送っていなかったかのように振る舞った。
彼が仕事の付き合いで連絡を忘れても、私は二人分作った肉じゃがを一人で食べた。
そして、最初から料理なんてしていなかったふりをした。
夫が兄に自慢する。
「うちの妻は本当に俺を愛してくれてるんだ」
「すごく理解があって、全然束縛しないんだよ」
兄は笑顔で返した。
「そうそう。うちの妹は一番大らかな女だからな」
「まあ、そのうち一生お前と連絡取らなくなるかもしれないけどな」
そんな私が、ある日気づいてしまった。
夫の優秀な秘書。
その女性は、高校時代に私をいじめていた女だった。
彼女は私専用のスリッパを履いていた。
夫は彼女を名前で呼んでいた。
そして、玄関の暗証番号まで彼女に教えていた。
深夜四時。
彼女は酔った夫を支えて帰ってきた。
夫は彼女の肩にもたれ、腕を回していた。
私は初めて、勇気を出して言った。
「……秘書を変えてくれない?」
夫はスマホを見ながら、眉をひそめた。
「君って普段はもっと物分かりがいいだろ?」
「そんな意味のない嫉妬するなよ」
「いい子だから、分かってくれ」
だから私は、何も言わなかった。
誕生日の日。
パスポートと印鑑を荷物に入れた。
そして、パリへ飛んだ。
兄の宿敵だった朝倉玲が、空港で私を待っていた。
手には、どこでもドアが描かれた看板を持って。
夫がケーキを持って兄の前で自慢していた頃。
「俺の妻は本当にできた女なんだ」
兄は楽しそうに頷いた。
「そうだな」
「うちの妹は、一番大らかな女だからな」
そして私は、パリの川沿いのアパートで。
どこでもドアが描かれた絵を開いた。
今度は――
逃げ込むためじゃない。
自分の足で、外へ歩き出すために。