遊び人の彼は私の死後、恋人を変え続けた――でもあの日、私にプロポーズするはずだった
Daisy
恋愛現代恋愛
2026年10月16日
公開日
2.3万字
連載中
私が死んだとき、彼は花屋の店主といちゃついていた。
だから私は、三年も彼に取り憑いてやった。
私の名前は小栗澪。フリーの調査報道記者。
児童養護施設で育ち、親も、身寄りもいない。
梅雨のある夜、私は雨の降る路上で何者かに殴り殺された。
遺体が見つかったのは、翌日だった。
息絶える直前、スマホの画面に映っていたのは、友人から送られてきた一枚の写真。
花束を抱えた柏木晏時を、花屋の店主・早春さんが見上げて笑っていた。
裏切られたんだ。
そう思ったまま、私は死んだ。
死んだあとは幽霊になって、彼に取り憑いた。
彼が家に連れてくる女の子を片っ端から怖がらせて追い払い、そのたびに彼が誰もいない部屋でつぶやくのを聞いていた。
「今月、もう三人目なんだけど」
そう、これは仕返しだった。
相変わらず女好きで、私のことなんて、どうでもいいのだと思っていた。
彼の手首に残る傷痕に気づくまでは。
机の上に飾られた写真を見るまでは。
三年間、一度も私のお墓に来なかったのは、来る勇気がなかったからだと知るまでは。
彼は、私を愛していないと言った。
それなのに、私のために人を殺した。
私を殺した、あの男を。
彼は、結婚なんてしないと言った。
それなのに、こう打ち明けた。
「お前が死んだ日、プロポーズするつもりだったんだ。……あと少しだったのに」
私は雨の中で死んだ。
彼は地獄の中で生きていた。
私が彼に取り憑いた三年間。
彼はその命で、私が生きるはずだった一生を償ってくれた。
私たちは、三途の川の渡し場に、桜の木を一本植えた。
彼は私を「茉莉」と呼び、私は彼を「柏木」と呼んだ。
「お前は花で、俺は木だ。お前の隣に根を張って、ずっと一緒にいる」