結婚式前夜、婚約者は十年想い続けた女と一夜を共にして逃げました。私が彼の親友と結ばれたら、今さら泣いて後悔しても遅いです
ほしめぐり
恋愛現代恋愛
2026年10月16日
公開日
2.4万字
連載中
結婚式を翌日に控えた夜。
周防澄は、式場のホテルで、十年間想い続けてきた女性からの電話を受けた。
そして婚約者の大江遥を残し、その女性のマンションへ向かった。
午前四時。
遥は三度、電話をかけた。
彼が出ることは、一度もなかった。
迎えた結婚式。
牧師が誓いの言葉を問いかけると、澄はその言葉を遮った。
「誓えません。この指輪は、本当に贈るべき人のために取っておきたいんです」
会場は静まり返った。
誰もが、遥が彼の頬を打つと思った。
けれど、彼女はそうしなかった。
そっと歩み寄り、彼を軽く抱きしめた。
そして脇の出口へと促し、こう告げた。
「絶対、幸せになってね」
そのあと遥は、ホテルの出口に一人で立ち、帰っていく三百人以上の招待客に、何度も頭を下げて詫びた。
やがて裸足のまま、ウェディングドレスの裾を泥に汚し、冷たい雨の中へ一人、歩き出した。
その後、澄は想い人を追って東北へ向かった。
持ち金をすべて使い果たし、新居にするはずだった家に、彼女とその娘を住まわせた。
彼が途方に暮れたとき、遥は受け取っていた結納金を返した。
婚約指輪も、贈られたジュエリーも売り、そのお金をすべて彼の口座へ振り込んだ。
添えた言葉は、たった一つ。
「これで、貸し借りはなしね」
カフェで澄が彼女の腕をつかんだときも、遥は静かに言った。
「周防くん、手を離してください」
彼女のクラウドアルバムに残された、十七歳の頃の一枚の写真。
それを目にして初めて、澄は知った。
遥もまた、十年間、自分を想い続けていたのだと。
そして、そんな彼女の隣には、ずっと一人の男がいた。
川瀬陸。
叶わなかった恋がある。
その先で、本当に結ばれるべき人と出会うために。