彼氏がモデルと海辺でキスし、ホテルで一夜を過ごした。それでも別れないのは、彼が最愛の亡き夫にそっくりだから
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恋愛現代恋愛
2026年10月23日
公開日
2.6万字
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ネット中の誰もが知っていた。
汐見澪は鷹宮望の本命の彼女で、彼を狂おしいほど愛している。彼が海辺で人気若手女優と熱いキスをしても、彼女は「彼を信じてる」と言った。
彼がインフルエンサーとホテルで一夜を過ごしたと報じられても、
「別れない。彼がいないと生きていけない」と答えた。
バラエティ番組の嘘発見器で「彼を許せる免罪符は?」と聞かれた時も、彼女は「彼のあの顔」と答え、心拍計付きのリストバンドはまったく反応しなかった。
五年間。誰もが、彼女がいつ捨てられるのかと楽しみにしていた。
ところが、先に捨てられたのは鷹宮望のほうだった。
春のお彼岸、汐見澪は亡き夫の墓参りをするため、白凪市へ帰った。
通りすがりの人が撮影した写真は、一晩でトレンドランキングの一位に躍り出た。
墓石の正面には「鷹宮朔之墓」、側面には「享年二十九」「建立者 妻・澪」と刻まれていた。
遺影に写っていた顔は、鷹宮望とまったく同じだった。鷹宮家の双子の兄で、幼い頃に行方不明となり、五年前に病死した男。
汐見澪は、彼の正式な婚姻届こそ出していなかったものの、事実上の妻だった。
鷹宮望はその夜のうちに白凪市へ駆けつけた。三日三晩、絶食し、後継者の座も放棄し、仏間に跪いて言った。
「縁を切られても構わない。俺は彼女と結婚する」。世間の評価は一変し、ネット上では彼を一途な男だと称賛する声が上がった。
彼は婚約指輪を何度も試着し、通りすがりの人から写真を求められれば、誰とでも快く応じた。
汐見澪は彼の目の前で、日向暖が着ていた、自分のために用意されたはずのドレスをハサミで切り裂いた。
手のひらから血が滲んでも、彼女は別れを告げた。
彼は鷹宮朔が彼女に宛てた手紙を、細かく引き裂いた。彼女は手首を切り、救急処置室へ運ばれた。
医師が出てきて告げた。
「彼女は本当に、生きることを望んでいませんでした」。
鷹宮望は廊下のベンチに座り、破れた手紙の切れ端を胸に押し当て、腰を折り、額を膝に押しつけた。
彼は初めて、「彼女が自分のものになること」よりも「彼女が生きていること」を優先した。
けれど、汐見澪は退院してから、彼に会うことさえ拒み続けた。