借金採掘師、魔界でバズる
現代ファンタジー
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現代ダンジョン
ざまぁ成り上がりダンジョン
『借金採掘師、魔界でバズる』六角 橙 /著
講評
「配信」だとどうしてもモンスターをスパスパ狩っていくイメージが先行しますが、一種の「作業配信」のテンションが静かで、でもコラボによる勢いを際立たせていていいですね。
「虚無から一転してバズる」劇的展開には説得力と爽快感がありました。時哉とイレーヌの掛け合いも自然で、映像的に想像しやすく、実際に配信画面を見ているような臨場感があります。
6話まででも十分楽しめましたが、今後の長編としての広がりも感じられる終わり方で、文句なしの一作です。
俺のじいちゃんの家の裏山にダンジョンが見つかった!
現代ファンタジー
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現代ダンジョン
冒険魔法ダンジョン配信
『俺のじいちゃんの家の裏山にダンジョンが見つかった!』厘/りん /著
講評
少年とじいちゃんのほのぼの配信かなあ、と思ったらじいちゃんがあまりにカッコイイ!
田舎の静けさとダンジョン発見の非日常が上手く対比されていて、心温まる要素と冒険のワクワク感が両立しています。じいちゃんとの絆や配信要素の導入が自然で、読者もすぐ物語に入り込めるのが魅力です。
オチで「そもそもこの土地は…」について匂わされていますが、そこもぜひ詳しく読みたいところです。探索やコメント欄の盛り上がりをさらに厚く描けば、長編でも十分に読ませる力を持つ作品だと感じました。
1作品該当なし
死んだらスパチャ返金な件について
現代ファンタジー
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現代ダンジョン
コメディギャグシュール
『死んだらスパチャ返金な件について』マカロー /著
講評
「死んだら返金」という過激な設定のインパクトが強く、ギリギリで生き延びるサトルの姿がユーモラスかつスリリングです。
回を経るごとに発生する、コメント欄の盛り上がりも現代的で、笑いと風刺が絶妙に絡み合っています。背景やサトルの人間的な弱さをもう少し深掘りすると、より厚みが増し読後感も強烈になるはずです。
ただ物語の性質上、前半部分で視聴者が主人公の死を強く願っているので万人におすすめはしづらいです。ですが「現代的なコメントらしさ」では文句なしに1番だと感じました。
祖父の強化魔法が強すぎる配信はこちらです
現代ファンタジー
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現代ダンジョン
コメディギャグほのぼの
『祖父の強化魔法が強すぎる配信はこちらです』寄道ゆらり /著
講評
ほのぼのとした孫×祖父の掛け合いに癒やされつつ、常識外れな強化魔法の暴走が笑いを誘う好バランスです。「いまどき誰がそんなものを使うのか」という話は私たちの社会にも通づるものがありますね。「現代ファンタジー」として非常によくできた設定です。
コメディでありながら温かみがあり、配信要素も軽快に取り入れられています。これは確かに、ヒロインよりおじいちゃんのほうが人気が出るよね、と筋が通っているので読んでてストレスがありません。
おじいちゃんの過去や咲の夢を少し強調するだけで、短編から連載向けへとスケールアップできるポテンシャルがあるので、ぜひ設定だけでも煮詰めてみてください。
お金が全てのダンジョン配信。底辺配信者の私は絶体絶命!〜投げ銭で誰か助けてよ!〜
現代ファンタジー
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現代ダンジョン
コメディワガママダンジョン
『お金が全てのダンジョン配信。底辺配信者の私は絶体絶命!〜投げ銭で誰か助けてよ!〜』夕雲 /著
講評
投げ銭=生死の命綱(テレポート代)という設定が緊張感を生み、底辺配信者アイラの必死さが強く伝わります。
若干、彼女の性格(または頭)の悪さがにじみ出ていて、コメント欄も小馬鹿にした感じだったり、呆れ果てている様子があるので、読者の好みはやや分かれるかもしれません。必死こいてるヒロインがなかなか新鮮だったので審査ではキャラ設定部分で加点を行いました。
勢いや描写には力強さを感じましたが、まだまだ文章・構成ともに非常に粗削りです。アイラの「厚かましさ」を魅力に変えるには、など随所の書き込みを分厚くしてみてください。
男女ン♡ダンジョン
現代ファンタジー
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ダンジョン配信ダンジョン攻略
『男女ン♡ダンジョン』 幸 /著
講評
発想が非常に面白い作品です。恋愛リアリティ番組とダンジョン攻略のかけ合わせが新鮮で、かつ番組解説者のような演出も個性が光ります。
テーマの組み合わせから風呂敷を広げやすいため、また映像にしたときに想像がしやすいシーンが多いのがいいですね。
気になったところは「配信」という枠で考えていいのかは個人差がありそうなところ、文字数に対して登場人物が多すぎるところの2点です。少ない文字数の場合は情報を削り、そうでない場合は文字数を多めにとるようにしてみてください。
全体講評
第5回テーマ短編プチコンテストにご参加いただきありがとうございました。
昨今の現代ファンタジーの火付け役である「ダンジョン配信」、ファンタジー要素を残しつつ「配信」という身近なエンタメとミックスさせるというのは思っているよりも簡単ではありません。
作家はファンタジーに詳しい&配信に詳しい、の2軸を求められ、かつ現実のエンタメとして力のある配信は、詳しい読者が読むと「この作者は動画はあまり見ないのではないか」と気付かれてしまうからというのがあります。
今回は「配信のライブ感」「動画ならではの盛り上がりポイント」などを加点要素として6作品を選定させていただきました。
動画配信者というのがまだ趣味の肩書きだった時代から、実況動画というものは存在しますが「編集されたものか」「生放送中のものか」は視聴者の温度感が違います。
そのため今回の審査でいう「ライブ感」は「ここにいない誰かが一緒にストーリーを進めてくれる」部分がカギになってきます。
「ダンジョン配信」は基本的に生放送がメインになってくるため、今回お伝えしたいのはこちらのポイントです。
①コメント機能の有用性を示す
場面の中で起きている事実は、読者も「視聴者」の立場なので見ればわかります。そのうえで各コメントに笑ったり、つっこみをいれたり、共感できる隙の部分が必要になってきます。ナレーションが「スライムが現れた!」と書いた後に「わ、スライム」「スライムでた」「スライムとか雑魚」とコメントが続いてしまうとなんだか冗長に感じますよね。
以下の2パターンが汎用性が高く、慣れない方でも「配信らしさ」をグッと引き立てることができます。
ナレーション「スライムが現れた!」、コメント「ぎゃーーーーー!って雑魚かよw」「ぷにぷにでかわいい」「さっさと倒して次行こうぜ」など事実に対する感想やキャラクターの次の行動を促すためのコメントにする。
ナレーション「するとそこに……」、コメント「それスライムじゃない?」「このダンジョン他になにがいるんだっけ」「それ強い個体だよ!」のように不明点を補足する目的でコメントを利用する。
②導入・山場・オチの鮮度を維持する
リアルタイムのイベントは全て「ナマモノ」です。これは配信に限らず、あらゆるエンタメ・アミューズメントで言えることなのですが、やはり「新鮮さ」が際立つことに意味があります。日替わりのアドリブ、新しいエリア、見たことのない武器など場面ごとになにか「なにそれ!?」「待ってました!」と言えるようなポイントを置いてみてください。
「これが見たかったんだよね」というテッパン芸ももちろん大切なのですが、テッパンは新しさがあって初めて光ります。使いまわすとマンネリ化するため、「いつもの」と「新しいの」を組み合わせた緩急を意識してみてください。
③やっぱり「配信者」本人の魅力が必要
どんなに面白いテーマでも、結局は「キャラクター」に戻ってきます。同じゲーム・話題の配信をしていても、同時接続数に差があるのは、やはり「本人に魅力があるから」ということになります。
配信で映えるキャラか?というようなことは特に考えなくても、小説は設定そのものが配信の台本になります。「零細配信なのに見に来ている1人はなんなのか」に理由をつけるとき、配信している人のことが好きだから、といえばすべて解決です。
ダンジョンの設定に悩む、おもしろいコメントを書くのは難しい、そんなときは原点回帰で、追いかけずにはいられない主人公を意識して作りこんでみてください。
※零細配信 視聴者が数人しかいない、または全くいない配信のこと。
プチコンでは今後も個性的なテーマでみなさんの創作支援を行ってまいります。みなさんとともに、次回もまた新しい物語との出会いを楽しみにしています。
ネオページ編集部