結果発表
もう一度名前を呼んで~逆転の恋愛方程式~
BL
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現代BL
日常王道イケメン
『もう一度名前を呼んで~逆転の恋愛方程式~』吉川丸子 /著
講評
魅力とはなにか、恋とはなにかを考えさせられました。作品の骨組みがしっかりしているので、要素が散らからず、シーンのつなぎ目も自然で読者のことをよく考えた構成だと感じます。
陽一も楓真もお互いに誠実なのでキャラクターの好感度も花丸、文句なしの最優秀賞です。
罠に嵌ったのはどっち?
BL
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現代BL
溺愛年の差上司
『罠に嵌ったのはどっち?』つきよの /著
講評
泣き顔が印象的な人というと、なんだか儚くて細い人物像でイメージになりますが、大和も松田も「大人の男性」であるシーンがきちんと書かれているので場面ごとの絵が想像しやすくていいですね。総合的なバランスが非常に良い作品ですが、あと一歩個性が尖るともっと深みが出そうです。
やわらかで甘い桎梏
BL
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現代BL
ミステリアス和風禁断
『やわらかで甘い桎梏』七瀬京 /著
講評
淡い燈り、艶やかな匂い、ぼんやりとした情景…の中の耽美!!!!!のような強いBL感にたじろぎました。
恭介がクラクラしている様子が非常に繊細に描かれていて、文章から色気が匂い立つようです。
不思議な空気感があって成り立つ魅力のある作品なので塩梅が難しいのですが、全体的にもう少し情報が欲しいなと感じました。
ザイン神父の矜持
BL
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ファンタジーBL
西洋風ドS年下攻め
『ザイン神父の矜持』とんこつ毬藻 /著
講評
色香と信仰は平行するものですが、似て非なるものなので「神父」というキャラクター設定にしたときの尖りが顕著な作品です。
読者の口をふさぐ力があります。受賞させてもいいものかと非常に悩みましたがテーマ合致性が高いのと、一応登場人物は「男性」ということでネオ猫賞とさせていただきます。
貴方の心に棲むもの
BL
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現代BL
日常切ないシリアス
『貴方の心に棲むもの』相沢蒼依 /著
講評
瞬間的に、というよりもじわじわといつの間にか心の大部分を占めてくる男…非常にずるいです。
ピアノが主題なのに陽と司の会話劇が静かで、作品を通して「音」に集中しているのが分かります。
後半に向けて明るくなっていくので、歓声や喝采などの「大きな音」を想像させるシーンがあると静けさが一層際立ちそうです。
魔性の男とサボり飯でまったりする話
BL
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現代BL
日常飯テロプチコン06・魔性の男
『魔性の男とサボり飯でまったりする話』みずしま /著
講評
「きちんとしたご飯は緊張する」という広都の背景で作品全体のしっとり感を維持しているのがお上手ですね。
骨抜きになるような魔性とはタイプが違いますが、人たらし+可愛いの小悪魔系魔性ということで入賞です。
ところどころの説明が足りないなと感じるので、初見で意図が通じるか、を意識しながら推敲していただきたいなと感じました。
ノートピアまで、あと少し
BL
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現代BL
天才オフィスラブプチコン06・魔性の男
『ノートピアまで、あと少し』和叶眠隣 /著
講評
香水がテーマなだけあって、「匂い」という文字にしづらいものをよく捉えた文章が非常に魅力的です。
誉のスマートな男性像とそれを追いかける光希の対比のバランスがいいですね。ただし、キャラの差別化が若干弱いかなと感じます。
穏やかな作風ではありますが変化に乏しいというデメリットもあるので2万字の中の急激な山場があるとなおいいですね。
推しのいる庭
BL
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現代BL
日常切ない一目ぼれ
『推しのいる庭』フィカス /著
講評
岩山・颯真・啓人という全くタイプの違う3人の描写や、穏やかな時間とその裏にある葛藤が丁寧に描かれています。
各話のサブタイトルにもこだわりが感じられていいですね。日常パートから急な水害へ、緩急はありますが1話に詰め込んでいるので勿体ないなと感じました。
長くする必要はないのですが「いつもニコニコしている」裏で「どうしよう」という颯真の心理描写はもう少し掘り下げられるといいですね。
全体講評
第6回テーマ短編プチコンテストにご参加いただき、誠にありがとうございました。
今回のテーマ「魔性」は、言葉の響き自体に解釈の余地が大きく、読み手・書き手それぞれが思い描く姿が異なるのが魅力のひとつです。
実際に集まった作品も多彩で、「静かな大人の男性像」として描かれたもの、仕草や雰囲気に重きを置いたもの、あるいは関係性の中で翻弄する姿を切り取ったものなど、さまざまな“魔性”が表れていました。おかげで選考はとても難しく、その中から8作品を選ばせていただきました。
BLはキャラクター同士の関係性に重きを置くジャンルです。そのため「設定」「雰囲気」「心理描写」が物語を支える大切な要素となります。
今回の作品群からは、作者の皆さまがテーマに真剣に向き合い、自分なりの解釈を形にされたことがよく伝わってきましたがもう少しスパイスを加えてほしいなと思いましたので以下の内容が参考になれば幸いです。
①「静」と「動」の魅力を探してみる
多くの作品では「魔性の男」が物静かでスマートな人物として描かれていました。もちろんそれも素敵な一つの解釈ですが、似たイメージが重なるとせっかくの魅力が埋もれてしまうこともあります。
例えば「静」の属性ならミステリアスに、「動」の属性ならスポーツマンらしく――それぞれの人物が「魔性」と呼ばれる理由は、外見や雰囲気以外の部分にあるはずです。
今回は「癒えない傷を抱えた相手」という設定も目立ち、展開が予測しやすくなってしまった点が少々惜しく感じられました。
②心理描写の深度
「理由はわからないけれど、なぜか惹かれてしまう」――魔性を表す魅力的な表現ですが、BLではその先にある「どうして惹かれるのか」「もう戻れない」といった心の奥行きが重要です。
今回の作品群は全体的に情報が控えめで、好きになる理由が明確に描かれていないため、「彼は魔性だ」と読者に強く納得させるにはやや弱い印象がありました。
外見や雰囲気だけでなく、話し方や仕草、内面を丁寧に描写することで「好きにならざるを得ない」と思わせる説得力を高めていただければと思います。
③舞台設定で個性を添える
BLでは恋愛要素が主軸となるのは自然なことですが、日常の一幕だけを切り取った構成では、物語全体の魅力がやや薄くなりがちです
「あらすじに書ける要素が『Aという属性の男がBという魔性の男を好きになった』だけになってしまう」――そうならないためには、ジャンルや要素の組み合わせが効果的です。
「オフィス×溺愛」「学園×ラブコメ」「異世界×純愛」といった舞台設定や属性の掛け合わせを工夫することで、「この二人でなければ成立しない物語」が生まれます。
BLは「男同士である」という看板の先に、さらに細やかな設定を積み重ねられるジャンルです。ぜひ舞台や関係性を磨き上げ、「この作品はBLだからこそ輝く」と思える物語を目指していただければ幸いです。
「魔性」というテーマには、無数の正解があると思います。
今回の作品群からは特に“静”の魅力が多く見られましたが、翻弄の仕方はまだまだ広がっていくでしょう。ぜひ、“自分にしか描けない魔性”を見つけていただければと思います。
ネオページ編集部