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第58章「冒険〜フォトンクレイモアを求めて 上」

「頼むみんな、ちょっと付き合ってくれ!!」

 旅行帰りの翌日。

 「JOAR」のパーティプレイヤーハウス。

 ほぼほぼ土下座する勢いでオルキヌスが頭を下げていた。

「お、お、お、落ち着けオルキヌス。とりあえず、顔を上げろ?」

 突然の奇行に困惑しつつ、ジンがオルキヌスを宥める。

「これが落ち着いていられるか! 頼むから付き合ってほしいんだ!」

「おぉ、落ち着け、だから何に付き合ってほしいか教えてもらえないと答えようがない」

 どうやらオルキヌスに並々ならず事情が生じたらしい事は分かったが、それがなんなのか、全く伝わってこない。

「お、おぉ、そうか。いや、俺もいい加減ユニークフォトン武器が欲しいんだよ!」

 顔を上げたオルキヌスの表情は真剣だった。

「あ、それだそれ。ユニークフォトン武器ってのはなんなんだ?」

 オルキヌスが説明する。

 ユニークフォトン武器というのは、フォトンの文字が示す通り、『スペースコロニーワールド』に由来する武器の一種だ。

 そもそも『スペースコロニーワールド』の武器は、武器種一つに付き一種類しか武器が存在せず、個性はオプションを装備することで変更するのが基本だ。

 なので、『スペースコロニーワールド』のキャラクターは基本的に、レア武器をドロップ狙いで狩りをしたりダンジョンアタックをしたりする――これを一般的に「掘る」という――のではなく、レアオプションを掘る事で、自己強化を行う。

 だが、このゲーム内には極めて高いレアリティで、そもそも高い性能を持つ武器が存在する。

 これらの武器は他の世界由来の武器のように独自の名前を持つ。

 例えば、シャルルの使う《ジュワユーズ》などがそれだ。

 あくまで独特の名前なだけで、本当に一つしかないユニークなわけではないのだが、基本的にあまりに挑戦難易度が高いこととあまりにドロップ率が渋いことから、オプションを集めるだけで満足する層も多く、ほぼほぼ世界で一つしかない武器となっていることも多い。

「なるほどな」

 ジンが説明を聞いて頷く。

 確かにジンなら《ライトニングソード》のように、レア武器はそのままそのプレイヤーの象徴となる。オルキヌスも自分だけの武器が欲しいと感じるのも無理はない。

 最近はジン人気から、魔法剣士をジョブに選び、《ライトニングソード》堀りに勤しむプレイヤーも多いと聞く。

 オルキヌスもそうなりたいのだろう。あるいは、一昨日会ったファンの一行との会話の中でなにかそう感じるきっかけがあったのかもしれない。

「しかし、どうするんだ? 本当にユニークな武器を手に入れるならなんの情報もなく手探りで探すしかないぞ」

「それなんだが、丁度つい最近、新しいユニーク武器らしき武器を使うボスが目撃されたって噂なんだ」

 その武器の名前は《フォトンクレイモア》。ユニーク武器としては地味な名前だが、ユニーク武器には違いないらしく、性能も相応なようだ。

 ただ、今の所ドロップしたという報告はないらしい。

「なるほど、それを手に入れれば、確かにたった一つの武器使いになれるな」

 オルキヌスの説明にジンが頷く。

「パーティの強化になるなら、断る理由はない。よな、みんな」

「うん、もちろん!」

「えぇ、当然よ」

 ジンが振り返ると、リベレントとアリも頷く。

「じゃ、そうと決まればボス狩りに行こう。ボスはどこだ?」

「富士の樹海に出てくるフィールドボスの一人らしい」

「富士の樹海、ダンジョン式のフィールドだったな。要はダンジョンアタックしてボスのポップする場所を確保して、後は粘れば良いわけだ」

「けど、結構厄介よ。富士の樹海は通称『日本の迷いの森』よ。毎日六時に構造が変わるし、そのたびに一度ダンジョンの外に追い出されるの。ドロップ率を考えると、数日ダンジョンアタックする覚悟が必要でしょうね」

 ちなみに、迷いの森は各リージョンに一つずつあるらしく、例えばヨーロッパリージョンだと、黒の森シュヴァルツヴァルトが「ヨーロッパの迷いの森」にあたる。


 そんな余談は置いておいて、場所は富士山の麓。

 四つある登山口がそれぞれダンジョンの入口となっている。

 富士の樹海は非侵食エリア、『ナイトアンドウィザード』侵食エリア、『スペースコロニーワールド』侵食エリア、『ファンタジックアース』侵食エリアの四つに分かれており、各登山口はそれぞれの侵食エリアに近い場所となっている。

 ちなみに、毎回樹海の構造が変わるのもこの四つのエリアの分布が変化するため、という設定である。

「今日、『スペースコロニーワールド』は黄色の入り口からが近いみたいだ」

 「JOAR」一行はこうして、富士の樹海のダンジョンへと突入する。

 入り口はまだ非侵食エリアで、野犬などの弱い敵が現れるだけだ。

 ジン達は弱い敵を近接攻撃で散らしながら、奥へ奥へと進んでいった。

 ただ、歩いても歩いても非侵食エリアは見えてこない。

「なぁ、ジン。お前の金鳥って上から周り見れるんだよな? ちょっと周り見てくれよ」

「あぁ、それな。さっき試したけど、木々に覆われてて全然ルートは分からんかったぞ」

 樹海の木々の密度が高い。なかなか道が見えないのである。

「いや、そうじゃなくてよ。『スペースコロニーワールド』エリアは機械の木々が生えてるらしいんだよ。それなら探せないか?」

「あぁ、なるほど。大まかな方向が分かるだけでも違うもんな」

 金鳥を高く飛ばせて、広く周囲を見渡す。

「見えた。方向が違うみたいだ。もうちょいあっちみたいだな」

 進路を変更して歩き始める。

 やがて光景が変化し、機械で出来た木々が「JOAR」一行を出迎える。

 敵の姿も変わり、フォトンセイバーを使う人型アンドロイド達や犬の姿をした機械の獣が待ち受ける。

 機械の獣が二体。アンドロイドが五体。

「なんだ、こいつら、どういう設定なんだ?」

「機械の木々はなんか地下から資源を汲み出してエネルギーを生み出すプラントらしいぜ。山頂付近に宇宙戦艦やらなんやらのリチャージステーションがあってそこと繋がってるらしい」

「へぇ」

 等と話している間に、機械の獣が前衛に躍り出て、キュルルルと機械の駆動音を響かせる。

「こいつは、さっきまでの野犬とかと一緒だと思ってるとまずそうだな」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 まずは定石通り、リベレントが前に出て《ウォークライ》して注目を集める。

 機械の獣が駆動音を響かせてリベレントに襲いかかる。

 強烈な攻撃だがリベレントが持つ大楯の守りを抜くには至らない。

「トニートル・アダレレ・グラディウス!」

 ジンは側面に回り込み、剣に雷を纏わせながら、《ライトニングピアッシング》を発動する。

 地面を蹴って跳躍に移った直後、アンドロイド達がフォトンセイバーをジンの進路上に向ける。

「まずっ!?」

 フォトンセイバーといえば、《ジュワユーズ》がその一例だが、既に見ての通り、フォトンセイバーは近接攻撃の他、射撃モードによる粒子加速砲ビーム攻撃を放つことが出来る。

 そもそもフォトンセイバーとは、短射程のフォトンビーム砲を常時継続発射しているような武器であるため、一瞬だが長射程のフォトンビームを放つことも可能というわけである。

 ジンは脚を踏ん張り直してブレーキを踏み、その場で急停止することでビームを回避したかったが、WSは一度発動すると発動しきるまで関連する部位を動かすことは叶わない。

 だが、そこにオルキヌスが割り込んでくる。

 ジンに向けて飛んでくるビームの一撃をオルキヌスが《ラージセイバーガード》で受け止める。

「すまん、助かった!」

 ジンの《ライトニングピアッシング》が機械の獣の一体に突き刺さる。直後、電流が機械の獣の内側で暴れまわり、機械の獣が沈黙する。

「まさか、ヘイトを無視してこっちの動きを予測して隙のある敵対者を優先的に狙うような動きをしてくるとはな、厄介だぞこれは」

 機械の獣はジンの《ライトニングソード》の良い獲物のようだが、アンドロイドが厄介そうだ。

「ならアンドロイドから先に倒すまでよ!」

 オルキヌスは《ラージセイバーガード》を発動し、フォトンラージセイバーの腹で飛んでくるビームを受け止めながら突き進み、敵陣の中心で《スライドクリーヴ》を放つ。

 暴風のような横薙ぎ払いが炸裂するが、アンドロイドはそれが命中する直前に後方へ飛び、そのダメージを最小限に抑える。

 そして、WS発動後の硬直中を逃さぬとばかりに、アンドロイド達はフォトンセイバーを振るい、オルキヌスへと一斉に突き刺す。

「ぐっ」

 さすが機械というべきか、その鋭い突きは寸分違わず同じ場所を狙い、オルキヌスに強烈な痒みを与える。

 だが、アンドロイドの注意がオルキヌスに向いているのはチャンスという他ない。

 ジンはクールタイムが終わったのを見計らい、再び《ライトニングピアッシング》を発動。機械の獣を沈黙させる。

 アンドロイドは機械の獣がやられたからか、三体が後方に飛び下がり、フォトンセーバーを射撃モードにして構える。二体は近接モードのままだ。

「いちいち厄介だな!」

 オルキヌスは一度後方に下がり、アリの回復を受ける。

「纏めて倒そうとすると避けられる。無理せず前衛から一体ずつ倒そう」

 ジンが言うと、一同が頷く。

「要はさっきされたのと逆のことをしてやればいいのよ。反応がいいのも良し悪しだって教えてあげるわ」

 アリが《スナップ》を放つ。

 アンドロイドは素早いステップでそれを回避する。

「そういうことか!」

 ジンは素早く《ライトニングピアッシング》を放ち、回避して空中にあるアンドロイドを刺し貫く。

「おら、《カラミティストライク》!」

 刺し貫かれて動きを封じられたアンドロイドに強烈な大上段の切り下ろしが襲いかかる。

「あと四体!」

 戦術さえ決まってしまえば、所詮アンドロイド達も雑魚MOBにすぎない。

 後は同様の要領で前衛が削られていき、戦いは決着する。

「こんな奴らに手こずってはいられない。ボスを探そう」


 そうして、彼らはたどり着く。

 巨大な剣が突き刺さる広場へと。

「あれだ、《フォトンクレイモア》!」

 そこに突き刺さっていた剣は、フォトンラージソードに似てはいるが、形状はかなり違う。

 フォトンラージソードは棒状の武器に極短射程のフォトンビーム砲が周囲に展開され、大剣の見た目を取る方式なのに対し、フォトンクレイモアはそもそもフレームが大剣の形をしている。

 おそらくフォトンカタナなどと同じでフレームの上をフォトンが循環するタイプの武器と思われる。

 余談だが、フォトンを使った近接武器にはフォトンセイバーやフォトンラージセイバーなどのような短距離フォトンビーム砲を使った武器とフォトンカタナや今、前にしている《フォトンクレイモア》などのようにフレームの上をフォトンが循環する武器のに種類がある。

 前者を「直接タイプ」、後者を「チェンソータイプ」等とファンの間では区別されている。ちなみに、設定上は後者の方がエネルギー効率が良いらしい。

「え、もう倒された後か?」

「いや、情報によると……」

 オルキヌスの解説は不要だった。

 上空から2mサイズの人型ロボットが降下してきてその剣を地面から抜いたのだ。《フォトンクレイモア》が起動し、刀身のフレームが赤色フォトンの輝きを宿す。

「ついに見つけたぞ、我らハイランダーの伝説の武器、《フォトンクレイモア》よ」

 感慨深げにロボットから声が聞こえる。

「む、貴様らも《フォトンクレイモア》を求めし者か。これは私が先に見つけたものだ、渡さんぞ」

「いや、俺らのほうが先に見つけたと思うんですが……」

「問答無用!」

 ロボットが武器を構え、ロボットの上に【Nimbus】という表示と四つのHPゲージが出現する。


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