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第70話

 食事を終え、皿洗いを手伝う。そこで、思い切って訊いてみることにした。

「おじさんはさ、結婚する気とかないのか?」

「ないな」

 即答だった。まあ、そうだろうとは思っていたけれど。

「ほら、氷川さんとか。おじさんの事情も分かってるし」

 おじさんは一呼吸おいて、口を開いた。

「彼女のことは確かに信頼しているけど、恋愛感情はないよ。獏が望月さんや月影ちゃんに対してそうである様に」

 ということは、咲夜との関係は見抜かれていたのか。長年の関係は、伊達じゃないということらしい。

「そうか……。おじさん、なんかごめん」

「構わないさ。獏、これからはもっと過酷な戦いになるだろう。向こうも死人が出ている以上、黙っている訳にもいかないだろうからな。その時、仲間も自分も必ず守り通すんだぞ。俺が唯一出来なかったことだ」

「……わかった」

 おじさんの表情を、見ようとは思えなかったし見られなかった。見てはいけない気がした。そんな気が、したんだ。

「皿洗い終わり、と。他にも人手があるとやっぱり早いな」

 いつのまにか終わっていた皿洗い。俺は怪しまれない様にいつも通りを装う。

「おじさんも、もっと俺らを頼れよな。皿洗いから何まで、世話になってるんだから手伝うっつーの」

「ありがとな」

 たったそれだけの言葉を交わし、皆のところへ戻った。


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