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第103話

 放課後。俺は昼休みに千葉から聞いたことを皆に伝えた。どう対策を練るか、それに知識を共有しておくのは悪いことではない。真っ先に口を開いたのは望月だった。

「私の能力で、千葉くんに変身すれば良いんじゃないかしら?」

 確かに、本物が現れるよりも先に変身して安心させるのは一つの手だ。そうなると、今回は望月の手腕が試される案件になりそうだ。

「じゃあ、千葉についてもっと詳しく知らなきゃいけないな。望月、長戸路の彼氏についての知識はあるのか?」

「残念ながらあまり……」

 千葉なんて、言ってしまえば長戸路の彼氏だから目立っているだけでごく一般的な生徒だしな。仕方がない。

「望月、明日一日千葉に張っておいてくれ。そうすれば、大体どんな人かはわかると思う」

「わかったわ。それにしても、長戸路さん心配ね」

「私も……精神弱ってるのって辛そうだよね」

 咲夜も便乗した。確かに精神は弱っているのだろうが、それを表に出さないのはプロ級のメンタルの持ち主だと思う。この学校の一等星みたいだ。

「とりあえず、今日出来ることはこのくらいでしょうか? 解散しましょうか」

 今日も月影の一言で解散になった。


 帰り道で、咲夜がふと漏らした。

「トワイライト・ゾーン、中々尻尾を出さないね……」

「そうだな……」

 正直そのことに対する焦りがないと言えば、嘘になる。繋がりも氷川さんだけだし、いつ途切れてもおかしくない。第一、あいつらはスパイを容認しても余裕なのだ。犠牲が一人出ていても、余裕。俺たちで本当に倒せる相手なのだろうか。

「そろそろ、新しい情報が欲しいよな……」

「うん……」

 咲夜を家まで送り届けた後、一人でまた考える。

 一時は清水時雨の件で接近できた気がしたんだがな。ここ最近は、息を潜めているのか何の気配もない。それがとてつもなく不穏な気がしてならないのは、俺だけではないはずだ。望月も、暁人も、月影も、咲夜も、おじさんも、恐らくは氷川さんも同じことを考えているはずなんだ。皆、言わないだけで。もう少し、せめて何かを掴めたら。そこまで考えていたら家に着いたので、「ただいま」と言い入る。

「おかえり、獏」

 母親とアイコンタクトで挨拶をし、自分の部屋に直行する。制服を脱ぎ、部屋着に着替えると一気に力が抜けた。ベッドに寝っ転がると、「獏、ご飯出来てるから食べちゃって」と声がかかった。今日の夕飯は食べられるものだと良いのだが。


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