騒動から2週間が経ち、漸く周囲も落ち着いてきた頃。煉と湊は揃ってマネージャーから呼び出されていた。
「ね、揃って呼び出しってマズくない?」
「だな。覚悟決めて行かねぇとやべぇだろな」
呼び出された場所に着くと、
もはや、確信を持った煉と湊は、何も言わずに用意された席へ並んで座る。
「えー、本日お集まりいただいたのは、皆さまお察しの通りかと思います。Renと蒼くんも分かるよね」
煉のマネージャーが火蓋を切る。言い訳を巡らせている湊を横目に、しれっとした態度で返したのは煉だった。
「こんだけ集まってるってことは隠しようがねぇって事だよな」
「そうだね。まぁ、結構前から薄々勘付いてはいたけど」
そう言ったのは湊のマネージャー。バレていないと思っていた湊は驚いて煉を見上げる。
「よく考えりゃ分かんだろ。お前んトコなんか学校同じなんも分かってっし、有名な俺と初対面つった時点で怪しまれてんだろ」
バッと社長の顔を見る湊。社長は『まぁね』と言いたげな顔を見せる。
「湊はホント、賢いのにおバカだよねぇ」
スマホを弄りながら言う秋紘に、社長が態度の悪さを注意する。そして、一緒になって隠していた綾斗と秋紘も同罪だと言った。
「言い訳になりますが、これは世間へ露呈することを防ぐための措置でした。湊ですよ? 知っている人間を増やせば油断が生じて、絶対どこかでボロを出すと思ったんです」
「そーそ。だいたいさ、社長たちが気づくのなんて時間の問題だと思ってたし。ま、それ以前に湊はウソへったくそだから、あちこちでヤバそうだったみたいだけど」
実は、相楽と懇意にしている秋紘。非常に撮影のしやすかった秋紘を相楽が気に入り、時々食事をするほど仲が良くなったのだ。
そんな相楽から、煉と湊についての連絡を受けていた秋紘は、綾斗と相談していっそ関係者にだけ周知させた方が動きやすいのではないかと判断していた。2人で協議した結果、数日前に秋紘が社長を呼び出し夕飯を奢らせるついでに暴露していたのだ。
「2人とも、勝手に動いてごめんね」
「まったくだっつぅの。せめて事前に言っとけよ」
苛立ちから態度を悪くする煉。マネージャーにコツかれて、態度を改めろと叱責された。
「実は、暴露したのはもうひとつ理由があってね。今から
笑顔で言った綾斗。ご紹介にあずかりましたと、蛙原が口上を始める。
「サルバテラのマネージャー、蛙原です。今回、この経緯に至った主な理由として、お二方の今後の仕事内容を考慮したことが挙げられます。まずは、連続短編ドラマのお話が一点、それに関連した撮影が数本すでに仮抑えの状態です」
「内容については、Renのマネージャーである
2人の大人が淡々と話を進めていく。それをポカンと聞く煉と湊。
「えっと、僕たちがBLドラマですか?」
宇陀から聞いた内容が信じられず、確認する湊。
「はい。大好評で最終回を迎えようとしている『恋きづ』ですが、これの影響は
嫌味っぽく言う宇陀に、煉が睨みを利かせた。咳払いで誤魔化した宇陀は、続いて注釈を加える。
「2人は未成年かつ同じ学校という背景を考慮して、キスシーンすらありません。学校であれこれ聞かれたら気まずいでしょう?」
「やはり、交際が露呈することは避けたいですからね。友人に詰問された場合、蒼が勢い負けして暴露しかねませんし」
両マネージャーからの視線に耐えきれず、湊は俯いてしまった。
「オレ思ってたんだけどさ、いっそこれを機にバラすってのもありじゃない?」
大人たちが『は?』と声を揃えて秋紘を睨む。
「あー怖い怖い。ま、聞いてよ。バラすつっても、ドラマ始まるタイミングとか終わってからとかよ?」
ドラマの内容が事実に沿っていれば話題にもなり、リスキーではあるが、今後何もないタイミングでただ露呈するだけよりはローリスクだろうと言う。勿論、公表するタイミングは大人たちに任せるというのが、秋紘の意見だった。綾斗はそれに賛同する。
少し考え、煉もそれでいいと意見に乗った。
「湊は? バラすのマズい?」
秋紘が、湊の意見を仰ぐ。湊は俯いたまま、煉の服を握って言葉を置き始めた。
「マズくはないよ。でも、それで皆に迷惑が掛からないか不安だし、本当にそれでいいのか分からないよ····」
「そうだね。急に言われても困るよね」
事態を飲み込めない湊へ、優しく言葉を掛ける綾斗。煉は、湊の肩を抱いて落ち着くよう言い聞かせた。
「あの、勝手に話を進めているようですが、この話は我々大人が慎重に検討して答えを出します。よりローリスクで、未来の為になる方向で熟考するため一旦持ち帰ります」
宇陀は、そう言って会議を締め括る。そして、両社長は煉と湊を残し、他は帰るよう命じた。