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第106話 初めてを君に②〜side陽向〜

浴槽の淵にそっと下ろされ、またキスをした。

「なぁ陽向」

秋斗さんは床に座っているから、俺の方が目線が上だ。なんだか新鮮〜!

なんて思いながら、秋斗さんのレアなつむじを見つけていたら、きゅっと両手を握られた。

黒くて吸い込まれそうな秋斗さんの目が俺を映している。


「俺さ、人と付き合ったことなくて、なんならまともに友だちすらいなかったから……。その、うまく、付き合っていけんのかな……とかさ、心配なこと、いっぱいあるし、また、もしかして、陽向のこと、困らせたり、不安にさせる事あるかもしれない。……でも、でも、俺は命かけて、陽向を護るから。それだけは、覚えていて。」


そういうと、『ははっ、恥ずいわ、面と向かって……』

と目を逸らしてしまう秋斗さん。

何を言われたのか整理していくうちに、

ぶわっと顔全体から汗が吹き出てくるのがわかった。


ぎゅっと秋斗さんの手を握り返す。


「秋斗さんっ、ありがとうございます!でもねっ、俺、俺も、秋斗さんのこと、護りますよっ!!色んなものから!まかしてくださいっ!困った時は一緒に乗り越えていきましょ!」

「ふはっ、そーだな、ひなの方が、色々と肝座ってんもんな。んじゃ、お互い。護りあうってことで。……ってごめん、ゆっくりしてたら時間やばいよな?」


そう言って、俺の髪の毛をくしゃっとすると、秋斗さんはささっとお風呂場から出ていってしまった。


はぁ……幸せ。

こんな幸せな気分にずっと浸っていたいけれど、そうはいかない。

今日からは新年初仕事だ。

昨晩着せてもらった部屋着を脱いで、脱衣所に並べる。


シャーーーー、あったかいシャワーが心地よい。

秋斗さんに沢山好きだ……ってしてもらえた身体。

昨日までの自分の身体とは何か違っている気がして、

自分の身体なのに、なぜか恥ずかしい。


「……えっ!?なんだこれっ」

湯気で曇っていた鏡にお湯をかけて、今映った気がする違和感にじっと目を凝らす。

やっぱり……

自分の首筋に無数の真っ赤な跡があった。

「……虫さされ?うわ、えっ!腕にも!わっ、胸のとこもだ!!え、ええっ、めっちゃ刺されてるー!!!」


自分の身体のあちこちに、蚊に刺されたような赤みのある部分があった。数えてみると軽く10箇所くらいある。


「えー、全然痒くなかったけど……秋斗さん大丈夫かな?やだなぁー、どこでこんな刺されたんだろ……虫さされの薬、秋斗さん持ってるかなぁ」


何だかだんだん痒くなってきた気がして、急いで身体を洗い流した。



ガチャ……


あっ、服、忘れちゃった……。

実家に泊まっていた時に着ていた服が、自分のトートバッグの中にあることを思い出した。

脱衣所には秋斗さんが出してくれたのか、グレーのバスタオルが置いてあった。


仕方ない。

バスタオルで全身を拭いて、下半身にぐるっとタオルを巻きつけた。

「秋斗さーん、シャワーありがとうございました!」


ぶふっっ!!!

秋斗さんのベッド、テーブルのある部屋に戻ると

コーヒーを飲んでいた秋斗さんが、何故か豪快に吹き出した。

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