「な……ひな……ひなた、陽向?」
んんんー。だれー、せっかく、気持ちよく寝てたのにぃ
「ひな、遅刻しちゃうから、起きて……」
「んん、ちこくう」
ちこくってなにー……
ぷにぷにと唇に何かが押し付けられて、
何だか美味しいものな気がして、もぐもぐと口を動かしてみたけど、
美味しい味……しない……。
「ぷっ、寝ぼけすぎ!それ、俺の指っ! なぁ、陽向、おはよ、朝ごはん作ったから、起きて」
「……………………!!!わっ!!!」
重たい瞼をのろりとあげたら
大好きすぎるカッコいい顔が目の前に現れて
びっくりした!
「……あきとさんっ、あ、あれ、」
ばっ、と起き上がり辺りをキョロキョロ見回す。
あっ……!ここ、秋斗さんの家だ!
うわぁ、俺、人のお家でぐーすか寝坊してたってこと?
やばっ!
「ご、ごめんなさい、えっと、」
「おはよう、陽向」
何だかいつにも増してとろけたキャラメルみたいな甘い声でおはようだなんて。
秋斗さん……
心臓に悪い。
「おはよう、ございます……あ、えと、」
今何時なんだろうと部屋をキョロキョロとすると
「7時だよ。今日9時出勤っていってたから……いや、もっとゆっくりでも良いのかなって思ったけど、えっと、シャワーとか、したいかなぁ、って……その……」
ん、俺朝シャン派じゃ無いけどなぁ
…………っあ!!!
昨晩の秋斗さんとの行為の色々を鮮明に思い出してきて
とてもとても恥ずかしくて、掛け布団を頭にかけて隠れてみた。
掛け布団の中の自分の身体が目に入る。
昨日秋斗さんが着せてくれたのだろう……自分の部屋着をちゃんと着ていた。
昨日、俺は途中で、とてつもなく気持ちよくて、気持ち良過ぎて、頭の中が真っ白になって……
なんだかわからないまま、いつの間にか眠ってしまっていたみたいだ。
あんなに気持ちの良いエッチ、初めてだったなぁ。
今までしたのとは、なんだか、全然ちがって、お腹の奥底からぐるぐるってして、胸がぎゅーってなって。
薄暗い中で、昨日のことを思い出してニヤける顔をペチペチと叩いていると、
掛け布団の上からぎゅっと抱きしめられた。
わぁ……
「うち、米とインスタント味噌汁くらいしかなくて、陽向のお母さんが作ってくれてたおかずの煮物、勝手にチンした。シャワーしたら食べよ」
「はい……ふふ、ありがとうございます」
掛け布団からそろっと顔を出すと、目元にちゅっとキスをしてくれた。
秋斗さんて、ちゅー好きなのかな、
昨日も、いっぱい……。
少し腫れぼったく熱を持っている自分の唇を指でぷにぷにと触ってみる。
腫れてるの、店長達にバレないといいけど……。
でも、いっか。
幸せなんだもん。
ふふっ。なんだか、やだなぁ、ずっとにやけちゃうよ。
掛け布団を剥がして、畳もうとすると、
どしっと重たいものがのしかかってきて、ベッドへと戻された。
「へ?」
「あーーー、可愛い、たまんない。もー、今日仕事じゃなかったら、一日中、陽向とこうしてたい。」
秋斗さんが大きなわんこみたいに俺の上に乗っかって、首元で頭をすりすりしている。
ええぇ……なにこれぇ、
秋斗さんの方が可愛いよぉー!
俺よりもがっしりとして、逞しい背中に手を回して、ぎゅっと抱きつく。
好き、好き、ほんと、大好き。
こんな日が来るなんて、9月のあの頃は思ってもいなかったなぁ。
顔を上げた秋斗さんと目が合って、恥ずかしくて目を閉じると
また、優しくちゅっと、唇を合わせてくれた。
「シャワー、俺がしようか?身体きつくない?」
「……もー、やだ。恥ずかしいから、自分でします……身体はちょっと、なんか、ぎしぎしってしてますけど、でも、だいじょぶです!」
ベッドの淵に座ると太ももや腰のあたりがピキピキっと引き攣ったような、筋肉痛な感じのだるさがある。
一番の違和感は、秋斗さんと繋がっていた所だ。
慣らしてはいたけれど、ずっと、長いこと繋がっていたからかな、なんだかまだ、何か、あるようにジンジンと熱を持っている。
違和感を気が付かれないように
そっと、立ち上がろうとした時、
「よいしょっ、と」
身体が宙に浮いて、慌てて目の前のがっしりとした肩に捕まる。
「わっわっ!!やだっ!えっ!下ろして、歩けますーっ」
バタバタと足をバタつかせるが、さらに密着するように、ひょいとお尻を抱き抱えられる。
「お風呂場まで連れて行くから。捕まってて」
「もお、重いのに」
でも、すごく嬉しくて、秋斗さんにしがみつきながら10歩くらいで着いてしまう距離を恨んだりした。