「あっははは……!!」
私はいつものように遠くからことの顛末を見守りながらヨハネの末路につい大声をあげて笑ってしまう
そんな自分が自分らしくなくてすぐに嫌になると手で口を押さえて笑いを堪える
「約束を守るなんて、そんな風に思ってたなら本当にお笑い草なんだけど……」
(とある薬を作ってほしいの、それを用意してくれれば、ヒカリちゃんを守ってあげる、私の力は……ヨハネさんがよく分かってるでしょ?)
そんな甘言と共にした約束を、私は守る気なんてさらさらなかった
そもそもこの薬すら手に入ればこの先ヨハネもゾンビイーターもどうなろうとどうでもよかったのだ
「なんて、私が約束守らないことぐらいヨハネも分かってて動いてたんだろうなー、それっぽいこと言ってたみたいだし……」
私は手元の薬品を指慰めにペン回しの要領でくるくると回すと壊す前にまたポケットに仕舞う
私なんかにすがる程にヨハネはヒカリを守りたかった
ヨルも
世界をどうしてでもソラを守りたかった
私には分からない感覚だ
だって好きな相手が望むことなら私は何だってしちゃうから
例えばそれが死ねとか、誰かを殺せとかだったとしても迷わずに即断する
ソラを幸せにしてほしいっていうお願いだってこうしてちゃんと聞いて、最後まで見守っている
だから、ヒカリちゃんが死を望んだならそうしてあげればいい話だっただけだ
「ねぇねぇソラ? そんな肉片早くどうにかして、早くここまで登っておいで? 次の段階に進もうよ、そうしたらあなたは、きっと幸せなんでしょう……」
私は聞こえるはずもないソラに語りかける
ヨルの望んだソラの幸せまで後少し
もう少し進めばそこには手放しでソラが幸せだと思える世界が見えてくる
そんなところで足踏みしている場合じゃない
ソラが幸せになってくれないと、私の目的も果たせない
だから、早くここまで登っておいで?
何度も手は貸してあげた
もう貸さなくても、ウミの手を掴んで登ってこれるよね
「だって……私は沢山、たくさんたくさんたくさん……それこそ嫌になるほどこの展開をシミュレートしたもの」
何度もやり直したその世界のなかでソラがこの元ヨハネである肉片の化物に負ける世界線は一度もなかった
何があっても、何かが邪魔したとしても
絶対にソラは勝つ
だから私は安心してあの場所でソラを待てばいい
「さてと、そろそろ行こうかな……」
私は肉片との戦いを観戦するのを早々に切り上げて立ち上がるとくるりと踵を返す
「待ってるからねソラ、そこであなたは幸せになって……私の約束と目的も果たされる……ああ、ヨル……ちゃんとそこから、見ててね」
私は少しだけ振り替えるとウミの中に核を宿すその人に手をひらひらと振ると、それを最後に目的の場所へ向かうために木の上から飛び下りた