「えー、前と同じ結果なので……うちでは異常発見できませんね」
前回同様、千歳が診察室で握力計をぶっ壊したあと、高千穂先生は言った。いや、だって、「同じ結果が出せるということは前回と身体能力が変わらない証拠なので、壊せるなら壊してください」って先生が言ったから……。
『やっぱりわかんないかあ』
千歳(女子中学生のすがた)はがっかりした顔で言った。
「他に、千歳のこと調べられる所ありませんか?」
千歳自身が異常を知覚してるわけだから、何かが起きているのは確かだ。そう思って高千穂先生に聞くと、「心霊系がわかる人のほうがいいでしょうね」と返された。
「霊の状態がわかる人、探せばいますからね。金谷あかりさんの婚約者なんか、そういう素質が非常に高いと聞いてますが」
「え、狭山さんですか!?」
へー、狭山さん、千歳の状態わかるみたいだったけど素質すごく高いんだ……いや、ていうか、こないだ千歳に会った時、狭山さん千歳に寒いですかって聞いてなかったっけ!?
「えっとごめん、千歳、寒いのってもしかして、九さんの事があった後すぐから!?」
『え、うん、そう言えばそれくらいかもしれん』
千歳はあっさりうなずいた。
「じゃあ、九さんの件で狭山さんに会った時、もう寒かった?」
『うん、そうだな、心許なくてなんか体の中のほうが寒い感じ』
え、じゃ、狭山さん、見抜いてたんじゃん!
「狭山さん、あの時千歳の異常わかってたじゃん! 寒いかって聞かれたじゃん!」
『あ、そう言えばそうだ!』
千歳は目を瞬いた。高千穂先生が苦笑した。
「じゃあ、その方にお任せしたほうが良さそうですね、本当は、千歳さんのことは私の方で微に入り細に入り調べたかったですが、残念です」
あ、忘れてた、この人マッドサイエンティスト入ってた、やばい。
「いや、その、これ以上は狭山さんに連絡して相談しますんで、これで失礼します!」
千歳を促して診察室を出て、会計を済ます。病院を出て歩きながら千歳に言った。
「じゃあ、狭山さんに連絡するよ、千歳のこと見てくれって」
『あ、ワシ、狭山先生とLINE交換したから、ワシから連絡できるぞ』
千歳は胸を張った。
『ワシのことだから、ワシからちゃんと頼む!』
あ、それもそうか。千歳だって自分でそれくらいやれるか。
『でも、改まって人になにか頼むLINEの文、自信ないから、送る文面書いたら一度見てくれないか?』
「うん、オッケー」
千歳はバスの中で真剣な顔で狭山さんに送る文面を書き、俺もチェックしてから狭山さんに送った。
すぐ千歳のスマホが鳴って、返信が来たようだったが、スマホを見て千歳は怪訝な顔になった。
『あのさあ、お前も一緒で狭山先生の家に来れないかだって。狭山先生、お前に別件で内々で相談したいことがあるんだって』